なぜ“増税賛成派”が増えているのか?城繁幸×赤木智弘「低年収時代よ、こんにちは」(6)(2/5 ページ)

» 2011年08月19日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
城繁幸さん

赤木:ボンカレーが「牛肉100%」と、ものすごく強調していましたからね(笑)。

城:ハハハ。もちろん牛肉だけでなく、ウナギも食べることはなかなかできませんでした。でも今では1000円札を出せば、ウナギを食べることができ、さらにおつりが返ってくる。店内で、学生がウナギを食べていても、その光景に違和感はありません。

 カロリー的にみると、今の時代は満ち足りているんですよ。しかし牛丼チェーン店で時給800円で働き、それで自尊心が満たされるか、となるとなかなか厳しいものがあるのではないでしょうか。もちろん幸せな人もいると思いますが、それは少数派です。

 昔、牛肉を食べることに憧れていた労働者と、今、牛肉を2〜300円出せば食べることができる労働者。どちらが自尊心を満たされ、社会の一員として働くことができているのか?――このように聞かれたら、答えることが難しいですよね。僕には分からない。

赤木:高齢者はよくこう言いますよね。「昔に比べ、今の日本はよくなった。暮らしやすくなった」「若い人たちは自分たちの時代よりも贅沢をしている」と。確かに食べ物であったり、着る物であったり、物資的なモノに関してのみ、その通りでしょう。

 自動車業界ではクルマが売れなくなったり、ファッション業界では高い服が売れなくなっている。こうした価値観の変化は徐々に出てきていますよね。

 他人に対する見栄といったものではなく、自分の好きなモノであればお金をつぎ込んでいく。例えばオタク的な文化はまさにそう。着る物にはこだわらないけど、自分が好きなアニメのグッズなどは買っている。

城:なるほど。僕はオタク文化には詳しくないのですが、いま赤木さんがおっしゃった自分が好きなアニメのグッズを買うといった人たちは増えているのでしょうか。

赤木:昔であればオタク的な人は、社会で孤立していました。学校のクラスに2〜3人ほどいて、クラスメートからは“珍しい存在”として見られていました。しかしインターネットの登場で、彼らがつながり始めた。そしてネットの世界で、彼らはオタクとしての矜持が保たれていきました。

 また昔に比べ、アニメのグッズを手に入れやすい環境になりました。そして珍しいグッズを手に入れれば、そのことをネタにネット上でコミュニケーションをしている。

城:なるほど。

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