「4000円のシャツが高い」と感じる、イマの世の中はヘン?城繁幸×赤木智弘「低年収時代よ、こんにちは」(5)(1/5 ページ)

» 2011年08月16日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 「いつかはクラウン」――。今の若者でこのキャッチコピーを知っている人はどのくらいいるのだろうか。かつてクルマといえば「経済力を示すステータスシンボル」であった。しかし今は“憧れ”といった思いは徐々に薄れ、クルマは単なる移動手段という意味合いが強くなりつつある。

 高いモノにこだわらず、むしろ安くていいモノにこだわる。こうした消費者は増えてきており、いわゆる“富裕層”と呼ばれる人にまで広がってきているのではないだろうか。高いモノに憧れない背景に、一体何があるのか。人事コンサルタントの城繁幸さんとフリーライターの赤木智弘さんが語り合った。

安いモノを買うことが恥ずかしくない時代

赤木智弘さん

城:消費者心理が1990年代の前半から、変わってきているなあと感じています。僕が高校から大学生だったころは、ファッション雑誌を読んでいる人が多かった。「同じファッションをしなければいけない」といった雰囲気がありましたね。洗いざらしのジーンズに白色のTシャツといったスタイルだったり、知りもしないアメリカンフットボールチームのパーカーを着ていたり(笑)。

 バブルのにおいがまだ残っている時代に、僕は社会人になってクルマを買いました。買ってみたものの、クルマに乗るのは土日のみ。また仕事が忙しくなってくると、土日もドライブしなくなってくる。「疲れているのに、なぜわざわざドライブに行かなきゃいけないのか」と感じるようになりました。そしてクルマにあまり乗らなくなりました。

 振り返ってみると、90年代の半ばあたりから消費者の心に変化が出始めていたのではないでしょうか。

赤木:雑誌がトレンドを引っ張るという流れは、90年代に消えてしまったと思っています。僕は80年代は実家にいて、まだ中高生でした。そこから外を見ていたのですが、そうした中で何かにリードされているといった感覚がありました。「こうしたモノが流行っている」というものが、明確に示されていた。そして、示されたモノに、多くの人が飛びついていました。

 90年代になると、高級バックを持っている女性が目立つようになりました。しかしそれはファッション誌がリードしていたというよりも、みんなが持っているから私も持っているといった感覚でしたね。「新しい」というだけでは、なかなか飛びつかなくなりました。

 その一方で、ラーメンブームといったあまりお金のかからないものには、多くの人が飛びついています。こうした風潮は今でもありますよね。

 いわゆる“牽引役”がいて、そこに向けて乗っかるようなモノがなくなってきました。その背景にはサラリーマンの給料が下がったからなのか、それとも新しいモノに乗せられるのがカッコ悪いと感じるようになったのか。どちらが先なのか、よく分かりません。

 例えば音楽業界ではCDが売れなくなって、何が流行しているのかが分かりにくくなりました。オリコンチャートを見ても、アニメやゲーム系といったニッチなジャンルが上位に食い込むようになっている。

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