名選手は名監督ならず――キャリア教育は誰が行うべきか(1/2 ページ)

» 2011年08月12日 08時00分 公開
[増沢隆太,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた)

RMロンドンパートナーズ(株式会社RML慶文堂)代表取締役。東京工業大学特任教授、コミュニケーション戦略家。人事コンサルタント兼大学キャリア教官兼心理カウンセラーで、東工大大学院では「コミュニケーション演習」の授業を行っているほか、企業では人材にも「戦略性」を重視する功利主義的アクティビティを提唱している。


 学生当人はもちろんのこと、少子化で厳しい経営環境にある学校関係者にとっても、新卒大学生の就職率が上がった下がった(「上がった」はないですね)というニュースは注目されます。しかし実際こうした数値は何を意味するものなのでしょうか。

 数字重視、データ重視はビジネスの常識かもしれませんが、もっと大切なことはその数字の意味を解釈できる能力です。これがないただの数字、ただのデータにはまったく価値がありません。数字を語る前に、その目的や目標、意味をしっかり把握しなければ、単に右往左往して何も成果として残すことができません。

 私は気が付いたら教育者になっていたのですが、同じように「英語教育」「キャリア教育」も、ホットテーマとして学内外の教育関係の世界では取り上げられています。しかしその目的や価値についてはあまり顧みられてはいないと感じています。

 教育テーマだし、英語もキャリアも「不要」という論を主張することはそうとう難しいため、印籠のように神聖不可侵なテーマのようになっていることに疑問を感じます。一番困っているのはそれらを「教える」先生方ではないでしょうか。

 私はビジネスの世界にどっぷりと浸ってきましたので、コンサルや講演のお相手は企業関係の方ばかりでしたが、ここ最近、教員の先生方(大学や高校、専門学校等)とお話しする機会が急に増えました。大学受験案内や、中高一貫校のキャリア教育などについて語ったインタビューをご覧になった方からメールもいただきます。

 実際に「キャリア教育が何をすれば良いか分からない」「そもそもキャリアとは何ぞや」「自分が企業社会を知らないので指導に困る」……このような声は頻繁に耳にします。

 私は、指導者(教師・教員・インストラクター)はその中身のプロである必要はなく、「教える」プロであるべし、という考えです。生徒が、お客さん(受講者)が、理解できるものを提供し、その成果に貢献できるかどうかが、指導者の能力評価です。

 そうなると、ますます「何が目的か」という問題意識の設定がすべての基盤となります。「戦略の要諦は目標設定にある」とクラウゼヴィッツは言います。ここをしっかり把握できているでしょうか。

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