2011年の円高関連倒産は28社、前年以下も高水準続く

» 2011年08月09日 14時25分 公開
[Business Media 誠]

 為替市場は政府の介入によって一時1ドル=80円台の水準になったものの、米国の債務懸念で再び1ドル=76円25銭の史上最高値をうかがう水準となっている。円高は輸入企業にとっては調達価格の低下を意味するものの、日本に多い輸出企業にとっては価格競争力が低下するため逆風となる。

 帝国データバンクの調査によると、2011年の円高関連倒産は8月7日時点で28社になっていることが分かった。1ドル=90円台半ばから80円台前半まで円高が進んだ2010年の58社ほどではないが、1ドル=110円台から90円台まで進んだ2008年、年間を通して1ドル=90円台だった2009年を上回るペースとなっている。

円高関連倒産の推移(出典:帝国データバンク)

足元は小康状態だが……

 倒産の原因を詳しく見ると、最も多かったのは「デリバティブ損失」で13社。「受注減少」が7社、「デリバティブ損失以外の為替差損」が5社、「輸出不振」が2社、「観光客減少」が1社で続いた。

 1ドル=120円に迫った2005〜2006年の円安局面では、輸入価格上昇をヘッジするため、銀行から1ドル=110円で毎月一定量の外貨を購入する権利を取得する代わりに、外貨を売る権利を銀行に渡すといった通貨オプション契約を結んでいた企業が少なくなかった。しかし、この円高で逆に実勢レートより割高な外貨を買い続けなければならなくなったことが企業の首を絞めているようだ。

円高関連倒産原因別分類(出典:帝国データバンク)

 月別の倒産件数を見ると、2010年12月の12件をピークに、足元では小康状態が続いている。しかし、帝国データバンクでは「震災や原発事故をきっかけに企業の海外シフトが一層進めば、下請け企業の受注もさらに落ち込む。輸出競争力も低下することで、輸出関連企業のダメージは大きい。7月中の円高局面は、数カ月後には倒産動向に影響を及ぼすことが予想され、過去の円高局面と震災で疲弊している中小企業を中心に、関連倒産が再び増加基調に転じる恐れは十分にある」とコメントしている。

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