音楽座ミュージカルは最近、早稲田塾と連携して企業研修分野に新規参入した。これまで述べてきたような独自の人間観・人生観をベースに、ビジネスパーソンが人生や仕事への取り組み方を見直す体感型研修である。これは、俳優がファシリテーター(研修講師)を務める一方で、営業活動も彼らが自ら行なっているという。
あの厳しい稽古・リハーサルに日々打ち込みつつ、さらに、研修のための営業活動や、研修の講師業にまで取り組むことに関して、俳優サイドとして心理的抵抗感や能力的な困難を感じることはないのか?
「一見、壁のように思えることも決して障害などではなく、むしろ自己を成長させてくれるゲームのようなものです。結構、みんな楽しんでいるんですよ(笑)」
時間的なやり繰りがそもそも難しいように見えるし、本業のミュージカルにマイナスの影響が出かねないという見方もあると思うが、その点についてはいかがだろうか?
「演技のことだけを考えていた時よりも、かえって演技の質が上がったというのがカンパニー内の評価です。研修や営業などの多様な活動はすべて演技の幅を広げ深めていく土壌となっています。
今、企業研修で活躍している男性の例で言えば、以前は至って“普通の人”だったんですよ(笑)。そんな彼が、あれよあれよという間に成長を遂げていったのですから、周りの人たちとしても『あの人は特別だから』という言いわけができなくなってしまいました。
言い換えるならば、『彼にでもあれだけできるのだから、自分だってできるはず』ということで、周りの人たちが軒並み、自己革新への意欲を高めていったのです。
世間では、よく“100匹目の猿※”ということが言われますよね。でも、私たちの中では『“1匹目の猿”こそが組織を変える』として、1匹目が重要だと思っています。今、例に挙げた彼がまさにその典型です」
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