インタビュー
» 2011年08月05日 08時00分 UPDATE

嶋田淑之の「この人に逢いたい!」:なぜサマデイは異分野の音楽座ミュージカルと早稲田塾を両立できるのか? (1/5)

ミュージカル制作では「音楽座ミュージカル」、進学塾では「早稲田塾」と一見関連性のない両分野で全国的な評価を獲得しているサマデイグループ。独立系のベンチャー企業が成長できた背景には何があったのか。音楽座ミュージカルで取締役チーフプロデューサーを務める石川聖子さんに聞いた。

[嶋田淑之,Business Media 誠]

嶋田淑之の「この人に逢いたい!」とは?:

 「こんなことをやりたい!」――夢を実現するために、会社という組織の中で、あるいは個人で奮闘して目標に向かって邁進する人がいる。

 本連載では、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏が、仕事を通して夢を実現する人物をクローズアップしてインタビュー。どのようなコンセプトで、どうやって夢を形にしたのか。日々、現場でどのように発想し、どう仕事に取り組んでいるのか――徹底的なインタビューを通して浮き彫りにしていく。


 大企業グループならいざ知らず、独立系のベンチャー企業において、関連性のない異業種に相次いで参入し一定の成功を勝ち取ることが、経営資源の制約から言って、いかに困難であるかは言うまでもない。

 ところが、資金力も後ろ盾もない中、ミュージカル制作と大学進学塾という著しく異質な両分野において全国的な評価を獲得した企業がある。「音楽座ミュージカル」(ヒューマンデザインが運営)と、現役高校生のための大学進学塾「早稲田塾」(サマデイが運営)を軸に展開するサマデイグループ(年商78億円、従業員数280人)である。

 音楽座ミュージカルは、『とってもゴースト』『リトルプリンス』で文化庁芸術祭賞を受賞したほか、『アイ・ラブ・坊っちゃん』『泣かないで』を初めとする作品で紀伊國屋演劇賞、読売演劇大賞を獲得するなど、日本のミュージカルシーンにおいて独自の地位を確立してきた。現在は年間58ステージをこなし、観客動員数は4万人。俳優40人とスタッフ15人で、研修事業なども含めて年商4億円という。

ah_ongaku1.jpg 『リトルプリンス』

 一方の早稲田塾は、受験業界における評価基準として数十年にわたって定着している「偏差値」を否定して「絶対値※」を提唱するなど、独自の指導方法によって支持を集め、オリコンの顧客満足度調査では「大学受験 塾・予備校」部門で5年連続1位を獲得している。15校舎と、中学生プライム館2校の全17校舎を展開し、サマデイグループの売り上げの中核をなしている。

※求める目標に対して、自分がどれだけ足りないかを知り、そこから何をいつまでにやるかを組み立て、実行するという方式。

 独立系ベンチャー企業でありながら、まったく異質な両分野において、これだけの成果創造が可能になった要因は一体何だったのだろうか? サマデイグループ創業時(1979年)からのメンバーであり、現在、音楽座ミュージカルで取締役チーフプロデューサーを務める石川聖子さん(61歳)にお話をうかがった。

ah_ongaku2.jpg 石川聖子さん

独創的な人間観・人生観を通じて、現代人に自らの生き方を問う

 「サマデイというのは、サンスクリット語で“三昧(ざんまい)”を意味しています。創業者であり代表の相川レイ子には、独自の人間観・人生観があって、それが弊社の経営のベースになっています。

 私では大変言葉足らずですが、要約すれば『“真心”と言うように、本来、人間の魂は善なるものであるにもかかわらず、その心は感情に翻弄(ほんろう)され、放っておけば弱く醜く汚い存在になってしまう。それほど善ははかなく、痛ましいものであるけれど、だからこそ真正面からあるべき自分を見つめ、目標とし、かけがえのない人生のステージを生き切ることが何よりも大切だ』という考え方です」

 なるほど、一見、人間不信や絶望感に立脚したペシミズムのようにも見えがちであるが、人間の弱さ・醜さという否定し難い現実を踏まえた上で、人としてどう生きるべきか、ということを現代の人々に対して鋭く問いかけ、提示しているということだ。

 「音楽座ミュージカルの作品は、すべてそうした世界観をベースにして創作されます。だからこそ、人の心が深く揺り動かされるのだと思います。ただのきれいごとに人は感動しないものです。

 早稲田塾においても、それは同様です。生徒たち1人1人が目的意識を持ち、『自分の人生というステージを生き切るためにはどうしたらよいか』ということを問いかけ、考えさせ、塾としても、生徒たちがその解を見出せるように、そして、その実現に近づけるように最大限のサポートを行なっていくのです」

 ということは、ミュージカル制作と大学進学塾という一見ミスマッチにも思える2つの事業だが、実はそこで顧客に創出している価値は、姿形が違うだけで中身は同一ということだろうか?

 「そういうことです。そして最も大事なことは、全スタッフが、そうした生き方を、日々、実践することを自らに課していることです。自分たちが本気でそう信じていないことを、ミュージカルの舞台や塾の中で口先だけで言っても、お客さまの心には届きませんからね」

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