労働時間が、減らないワケ城繁幸×赤木智弘「低年収時代よ、こんにちは」(2)(4/5 ページ)

» 2011年08月05日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

城:愛社精神や滅私奉公というのは、部長以上がやればいいだけの話。ヒラ社員や中間管理職はほどほどでいい。

赤木:下っ端で残業をしない人がたくさん増えれば、そのぶん労働する人も増えていく。

城:そうですね。日本企業は残業時間が長いですが、そもそも残業が好きな人なんてほとんどいません。多くの正社員は残業を売りたいはずなんですよ。逆に失業者からすれば、その残業を買いたいはずなんです。残業という商品が取引できるはず。しかし成立していない今の状況というのは、そこに規制があるから。その規制をなくせば、労働をあげたい人と労働をほしい人の間で取引が成立するはずなんですよ。

 また10年以上前から、正社員の間で出世を望まない人が増えてきている。公務員の間では出世試験を受けない人が増えてきているし、商社でも海外に行きたくない人が増えてきている。

 仕事以外にやりたいことがあるという人もいますし、特にやりたいことはないという人もいます。彼らは「なぜこんなに長い時間働かなければいけないのか」と思っています。毎日終電の時間まで働くことが好きという人と価値観が違うわけですよ。

 この変化というのは「滅私奉公をしても、これ以上は望めないだろう」という意識があるから。労働というのは自分の時間を投資するようなもの。自分の時間を投資して、多くを望めないのであれば、「ほどほどでいいのでは」と考える人が増えている。

 逆にバリバリ仕事をしたいという人は、どんどん働けばいい。ただ今の時代、ひとつの会社でバリバリ働いても、手にするものはそんなに多くはないと思いますね。

赤木:バリバリ働きたい人であっても、その会社でこれ以上成長できないなと思えば、転職または起業すればいい。単純に仕事か趣味かというのではなく、別の仕事を探し、そこで自分を成長させていくという考え方も大切。こうした考え方をする人が増えていけば、社会も多様化していくでしょうね。

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