モスの低価格カフェ「MOSCO」は何を狙っているのか?それゆけ! カナモリさん(1/2 ページ)

» 2011年08月03日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2011年7月29日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


 7月21日に東京ウォーカーが「モスがセルフスタイルのコーヒーショップ『MOSCO』を板橋にオープン!」との記事を配信した。

 「MOSCO」は「モスのコーヒーショップ」を表しているというが、上記記事によれば、「1号店となる店舗は『低投資』『新立地』『スピード提供』を開発コンセプト』としているという。

 コーヒーショップの商品(Product)は、飲み物とフード、店舗空間であるが、MOSCOのメニュー構成は大規模な店舗設備を不要とするため「コーヒー」とオリジナルの「白いトマトジュース」(←ちょっと謎。話題性喚起のキモか?)を中心に、「ホットドッグなどの軽食メニュー」とシンプルなメニュー構成に徹している。店舗は面積約9坪と小規模ながら、快適性を高めるため全席禁煙であるという。その商品を提供する価格(Price)は、200円台を中心とした低価格に設定している。

 さらに、立地(Place)は、「エキナカ、空港、書店併設など、新たな立地に出店を積極的に進め、2012年度までに5店舗の出店を目指す」と記事にある。

 カフェ人気であるが、世の中のカフェの1種類は高〜中単価である「シアトル系」で、完全禁煙の「スタバ」、分煙(完全分煙と不完全分煙は店舗によって異なる)「タリーズ」など。もう1種類が、低価格・分煙(完全分煙と不完全分煙は店舗によって異なる)の「ドトール」「ベローチェ」などだ。「低価格で完全禁煙」というポジションがホワイトスペースであることが分かる。

 「ちょっと小休止する程度だからあまりお金はかけたくないけど、タバコはイヤ!」というニーズギャップに応えているカフェは意外と少ない。それを、モスフードサービスはフランチャイズの投資負担を小さくして、スピーディーに展開していこうという狙いなのだろう。

 モスのカフェといえば、銀座7丁目に展開している「モスカフェ」があるが、上記は定番メニューに絞り込んでいるとはいえ、バーガーなど通常店のメニューも置いている。また、まったくの別ターゲットを狙っているというより、ターゲット層を通常客に加えてカフェ&スイーツ愛好客に拡大したのではないかと考えられる。

 今回のMOSCO、フードはホットドッグなどで基本のバーガーも置かない。また、ポジショニングコンセプトは記事にあるように、「“元気充電コーヒーショップ”」である。ターゲットはエキナカ、空港、書店併設などの好立地=通りがかりに、短時間の休息=充電をしたい人に設定されている。「ファストフードとはいっても比較的ゆっくり食事をしたい」という従来のモスの顧客とは、かなり異なる層を狙っているようだ。

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