ユーロが患う3つの病と、3つの処方せん藤田正美の時事日想(3/3 ページ)

» 2011年08月01日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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ジョージ・ソロスのプランB

 ギリシャのデフォルト(債務不履行)か、ギリシャがユーロ圏から離れる。これはリスクが高すぎるかもしれない。こうしたことが言われたとたんに、アテネ、リスボンやがてマドリッドやローマでも、人々は銀行から預金を引き上げようとするだろう。

プランC

 オーストリア、フィンランド、ドイツ、オランダがユーロから抜けて新しい統一通貨をつくる。慎重に計画して実行すれば、これがユーロに残った国も助けることにつながる可能性がある。ユーロが値下がりし、それらの国の競争力が高まるからだ。もちろん新通貨に移行した北の諸国の競争力は落ちるかもしれないが、インフレの懸念から解放され、南の諸国の面倒をみなくてもよくなる。そして現在ユーロに加盟していない国の一部もこの新しい通貨に加盟するかもしれない。

 このプランCを実現するためには、前述した3つの病気にそれぞれ対処する必要がある。政治的にも現実的にもハードルが高い。そしてメルケル首相の勇気が何よりも必要である。

欧州の動きから目が離せない

 以上がヘンケル教授の主な論点だが、これを見ても主権国家が共通通貨をもつことの難しさがよく分かると思う。1999年1月からスタートした統一通貨ユーロが、十数年という短い歴を終えてしまうのかどうか、欧州の動きから目が離せない。

 一方、わが国の政治家は、日本の債務は日本だけの問題であるかのように考えているが、実際には欧州の台風がもたらす大きなうねりは、市場という海を伝わって必ずやってくる。その時に「私はうとい」などと言う首相がその座にいないことを切に願うばかりである。

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