「高級品市場だけでは生きていけない」――日本電産・永守社長のインタビューに思う(2/2 ページ)

» 2011年07月28日 08時00分 公開
[中ノ森清訓,INSIGHT NOW!]
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高級品戦略はモノ発想であって顧客発想ではない

 「我々は高級品でいく」戦略のもう1つの問題は、あくまでもモノ発想であって、顧客発想でない点だ。そこには、自分たちがそのコストでしかモノ作りができないので高級品市場を攻めるという考え方しかなく、高級品にニーズがあるのか、その高級品にはどういうニーズがあるのか、どれだけの市場規模があるのかといった顧客視点での発想がまったく欠如している。これではモノは売れない。

 では、冒険をせず、これまでの国内を中心としたマスマーケットを中心に守っていけば何とかなるかというと、残念ながらそうはいかない。日本企業がかつてそうであったように、韓国、台湾、中国などの新興国のディスカウント市場のプレイヤーが品質を向上させ、日米欧の先進国のマスマーケットを虎視眈々と狙っている。彼らの攻勢を受け、汎用半導体、PCから日本企業が相次いで撤退を余儀なくされたように、また、最近ではスマートフォンですでに韓国、台湾メーカー品が日本市場に多く入ってきている。

 永守社長はこのインタビューで説く。「日本企業はもう一度、世界で血みどろのシェア争いをしないといけない。繰り返しになるが、低価格品は新興国企業に任せるなどと言っていたら、やがてやられる。戦い抜くというスピリッツがないとダメなんだ」。

 こうしたことを考えると、結局、我々がやらなければいけないことは、「良いものを安く早く作る」ということに尽きる。特に、安くということになると、これからの成長市場、マス市場である新興国市場の価格に見合ったコストでのモノ作りということになる。

 そのためには、たゆまぬコスト低減努力を続けていくしかない。コスト低減に終わりはない。(中ノ森清訓)

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