株式会社戦略調達社長。コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供している。
少し前のものになるが、日経ビジネスオンラインの日本電産の永守重信社長へのインタビュー記事を見て、「コスト低減に終わりはない」と改めて思わされた。
そのように感じたのは、永守社長の日本企業に対する厳しい環境認識を読んでのこと。今回は、永守社長のその環境認識を紹介したい。
多くの日本企業は、中国など新興国の企業がどんどん安いものを出してくる時、「我々は高級品でいく」と考える。大企業ほどすぐにそう言う。だが思い起こすと、僕が日本電産を創業した1973年に、米国にはRCAという巨大電機メーカーがあったけど、十数年でつぶれた。
誰にやられたかといったら日本の電機メーカーだ。今で言えば、韓国や台湾、中国のメーカーにやられたようなものだろう。
どうしてやられたかと言うと、高級品に逃げて低価格品はOEM(相手先ブランドによる生産)にしたわけだ。今、日本の会社が中国や台湾の会社にPCやほかのモノを作らせているが、それに似ている。
高級品市場だけで生きていけるというのは、技術的過信に基づいた発想で、とても危険だ。技術だけで売れるなら新興国市場はみな先進国の製品で埋め尽くされていたはずだが、そうはなっていない。新興国市場をあなどってはいけない。
技術的過信は、企業と国の双方を危うい方向に持っていく。(出所:日経ビジネスオンライン「今こそ、血みどろのシェア争いを勝ち抜け 復興に向けた提言:日本電産の永守重信社長に聞く」)
日本だけでなく、米国も欧州も先進国市場の景気低迷が続いており、回復の兆しが見られない。日本に至っては人口減による市場縮小が必至だ。こうなってくると良い時もあれば悪い時もある景気と考えるより、特に日本については、市場が縮小する方向にあるという経済構造の変化ととらえるべきだろう。
弊社のような市場シェアがほとんどないベンチャー企業であれば、マクロの市場の縮小の影響を直接受けることは少ない。それよりは1件1件のお客さまをどう獲得、確保していくのかというミクロの問題である。
一方で、企業規模がある程度大きくなると、その固定費負担から、ある程度のマス(数量)の市場を常に確保しておかなければ維持できなくなってしまう。
高級品市場というのは得てして単価が高く利幅はあるものの、数量があまりにも少なく、利益の絶対額を十分に確保できない。今の日本の自動車メーカーのようにディスカウント市場から、品質を改善しマスマーケットに進出し成功した例は多々あるが、マスマーケットから高級品市場に進出することにより、企業としての飛躍を果たした例はあまり聞いたことがない。
一方で、高級アパレルやベンツのように高級品市場からセカンドラインでマスマーケットに進出し、成功した例は多々ある。やはり企業規模がある程度になってくると、ニッチマーケットで成功しても焼け石に水で、マスマーケットでの勝負に勝たなければいけないということだ。
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