なぜ中国人は「ごめんなさい」と頭を下げないのかWu Yuの中国版“新人類”とうまく付き合う方法(1/4 ページ)

» 2011年07月27日 08時00分 公開
[Wu Yu,Business Media 誠]

著者プロフィール:Wu Yu

 1980年7月7日生まれ。2004年7月、北京第二外国語大学日本語学部卒業後、日系PR会社で、日系電器メーカー広報部に出向。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程を経て、PR会社「オズマピーアール」に入社。「中国コミュニケーション戦略室」で日本企業の中国コミュニケーションプランを立案している。

 小学校から大学までバリバリの“陸上ガール”として過ごし、100メートル13秒の健脚を誇る。3度のメシより酒が好き。ビール、日本酒、紹興酒となんでもござれの酒豪でいくら飲んでも足取りはしっかりしているものの、重度の方向オンチがゆえにとんでもない方向の電車に乗ったりして、帰宅にはえらく時間がかかる。


 仕事柄、日本から中国に進出する企業の方とお話をする機会があるのですが、そこでよくされる「相談」があります。

 「現地の従業員にミスを指摘したら、口では“対不起”(すいません)と言うんですが、どう見ても謝っている態度じゃないんです。やはり反日感情があるからなのでしょうか?」

 その中国人従業員に会ってないので100%とは言い切れませんが、それは恐らく誤解でしょう。「対不起」の言葉が出るとき、「その人は自分が悪い気持ちでいっぱいだと思いますよ」と私は答えます。

 同じ中国人だからかばっているわけではありません。私がこのように答える理由はひとつ、中国には「謝る」という文化がないからです。中国人っていうのは傲慢な民族だなあ、なんて思わないでください。単に日本人のような謝り方をする文化がないということなのです。

 ちょっと例は古いですが、このギャップを象徴するようなエピソードがあります。2006年、世界的に有名なファストフードチェーンの中国現地法人が中国全土で流したCMに対して「中国人に対する侮辱」という抗議が殺到して放映中止となり、同社が謝罪を表明するという騒動が起きました。

 問題のCMは、1人の男性客がDVD店の店主にひざまずいて優待期間の延長を求めるシーンから始まり、その直後に「当社は365日優待」というセリフが続きます。

 当時、職場の日本人から「一体なにが問題だったの?」と尋ねられましたが、私たち中国人からすれば、「え? なぜこれが問題にならないの?」と逆に首を傾げました。なぜなら、中国では「男の膝下には黄金がある」という有名なことわざがあるからです。これは女性にもあてはまるもので「神様や親、年配の親戚の以外、決してひざまずいてはいけない」という中国人の強い意識のあらわれなのです。

 このひざまずくことと同じような意味で、人前で頭を下げるという行為も中国人的にはNG。「対不起」の言葉だけで中国人にとっては十分に「謝罪」なのです。

 そんなことを言っている私ですが、最近ではすっかり「日本流」に慣れてしまい、たまに里帰りすると、つい「対不起」を連発して頭を下げたり、お辞儀したりするので、友だちから「大丈夫? 謝りすぎだよ」とか笑われ、また「あっ、ごめんね」なんて言ったりして……。

 ちなみに、人の頭を叩くなんてのも論外です。例えばバラエティ番組で、お笑い芸人が共演者の頭をパシンと叩き「ツッコミ」を入れたりしています。今でこそ、お笑い特有のコミュニケーションだと分かって笑ってしまいますが、初めて見たときは衝撃でした。これも中国人的にはNGなのです。

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