ホテル・ウレンスヴァンで用意されているアクティビティの1つに、ヘリコプターによる遊覧飛行がある。空から見ると、フィヨルドやその周辺のスケールの大きさを改めて実感できるのでお勧めだ。
ホテルの背後にある山の斜面をなめるように上昇して行くと、たちまち森林限界を越え、岩と雪とわずかなこけ類が生えるのみの、荒涼とした風景が目に飛び込んでくる。そこはハダンゲルヴィッダ(Hardangervidda)と呼ばれる、平均標高900メートル、総面積が約6500平方キロメートル(東京都の約3倍)という広大な台地だ。ノルウェー最大の国立公園でもある。
高原に降った雪は、太陽に溶かされるとそこかしこで小さなせせらぎを形成する。それらはやがて1つにまとまり、激流となって急斜面を流れ落ちフィヨルドへと注ぎ込む。ウレンスヴァンのそば、フーセダーレン(Husedalen)渓谷を流れるシンソ(Kinso)川もその一例だ。川が生まれてからフィヨルドに辿り着くまでを、ものの数分で目の当たりにできるのもヘリコプターならではだ。
ちなみに、ノルウェーは電力需要の90%を水力発電でまかなっている自然エネルギー大国である。フィヨルドの多いノルウェーでは至るところに大小さまざまな滝があり、それらを利用して各地で小規模発電が行われている。
フーセダーレン渓谷の最下流部にもそのような発電所がある。巨大なダムで川をせき止め、環境を破壊するのではなく、あくまでも小さな規模で、滝の落差を利用しつつ、自然への影響を最小限に留めながら電気を生産しているのだ。
この手法は、国土の大半を山岳地帯が占め、それらを流れ落ちる小規模河川が無数に存在するわが国でも応用可能なはずだ。福島第一原子力発電所の事故/人災によって多大な被害を被っている日本がノルウェーのエネルギー政策から学べることは多いのではないかと感じた次第である。
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