アマゾンに負けるな! イーベイに見る米国ネット通販ルネッサンス(3/4 ページ)

» 2011年07月22日 08時00分 公開
[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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イーベイが実践するLO(ローカル)

 「ネット」オークションとして地位を確立したイーベイとしては、かつては、「ネット上での売買をファシリテートする」ことに意義があった。しかし、昨今では、最終的に売買が起こるのはどこかに関わらず、ネットとリアルの橋渡しをすることに新たな意義を生み出している。

 2010年12月、イーベイは、ローカル店舗の在庫情報Web検索を可能にするサイト、Milo.comを買収したが、現在、イーベイ・サイトへの同機能の統合を着々と進めている。イーベイで商品検索すると、イーベイ内で売られている商品と並んで、最寄りの店舗の在庫および価格情報が表示される(もちろん在庫情報が提供されるのは、このプログラムに加盟している店舗に限られたことだが)。

 このサービス、現在はβ版のため、加盟店舗に無料で提供されているが、ゆくゆくはリスティング広告料を徴収する考えだろう。アマゾンが自社サイトのマーケットプレイスに出品していないベンダーにも広告機会を提供する「アマゾン・プロダクト・アド」を見ても分かるが、アマゾンやイーベイなど絶大な集客力をもつマーケットプレイスは、もはや販売の場であるだけではなく、有効な広告プラットフォームでもあるのである。

 イーベイにこだわらず、米国の流通市場全般についていうと、最近、このLO(ローカル)を巡る動きがますます活発になってきた。昨年あたりからますます注目を浴びてきているフォースクエア(Foursquare)やフェイスブック・プレイス、そしてフェイスブック・ディールの位置情報サービス、そしてその他数々のショッピング・アプリは、テクノロジーに明るい若者層を中心に確実に普及し、米国の生活者の消費行動を大きく変えつつある。

 スマートフォンでフォースクエアのアプリを開くと、「近所に28件のスペシャル(バーゲン・ディール)があります」などといった表示が出てくる。「初めてチェックインする人には10%割引」といったようなオファーがリストになって並んでいる。そんなオファーにつられて、行ったこともない店に入ってみたりする。1回体験してみて、そのサービスが気に入れば客はまた利用するだろう。位置情報サービスとからめたディールは、そんな「トライアル購入」を促進する。

 フォースクエアの醍醐味の1つは「ディスカバリー(発見)」だという。友人の「チェックイン」から、あるいは近所の「スペシャル・ディール」から偶然に新しいお店やサービスを発見する喜び。ネット・コマース・ルネッサンスのキーワードの1つでもある「セレンディピティ(偶然の出会い)」がここにもある。

 本質的に「ローカル」な店舗が、Webやモバイルを駆使していかに顧客を誘引するか……。これを戦略の焦点とする企業も出てきた。しかし、どんなにWebやモバイルを駆使したところで、来店時のショッピング体験そのものが月並みでは顧客の心をつかめるわけがない。その根本を忘れてはいけないが、店舗小売業にとって、Webやモバイルがもはや無視できない存在であることは否めない。そして、「ネット企業」にとっても、「ローカル」が無視できない時代になってきた。

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