アマゾンに負けるな! イーベイに見る米国ネット通販ルネッサンス(2/4 ページ)

» 2011年07月22日 08時00分 公開
[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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イーベイが実践するSO(ソーシャル)

 米国の人気男性アイドル、ジャスティン・ビーバーの髪の毛(落札額4万668ドル)、投資家ウォーレン・バフェットとの昼食(落札額263万ドル)など……。世にも奇抜なものが売れるオークション・サイトとして誉れ高いイーベイだが、最近はそればかりではない。米ネット通販有数のトラフィックを生かして、ファッションの領域にも積極的に進出してきている。

 今流行りの「ネット・プライベート・セール(ネット上で限定顧客を相手に限定品を限定期間内に売り払うセール・フォーマット)」を取り入れた『ファッション・ヴォウルト(「ヴォウルト」は英語で、「金庫室」の意)』というマイクロサイト。初期のイーベイをよく知る私のような者だと、あまり、「イーベイ=新品」とか、「イーベイ=ファッション」とかいうイメージはないのだが、イーベイではなんと3秒に1足の靴が売れるらしい。

 ファッションといえば、これほどソーシャルな商品カテゴリーもほかにない。ファッションとは自分自身を表現する媒体であるばかりでなく、他者との仲間意識を表現したり、他者の自分への評価を大きく左右したりもする。

 週末に街に出ると、楽しげにお喋りをしながら買い物に興じている女性たちの姿に出くわす。試着したところをお互いに見せ合って意見を交換したり、良いと思うものを勧めあったり……。時には友達同士、時には母と娘の姿もある。また、彼氏を連れて買い物に来ている女性もいて、試着室の外でカウチに座って手持ち無沙汰そうにしている男性の姿を見ると微笑ましく思う。

 ファッションというのは、着る当人が「良い」と思うだけでは不十分で、やはり他人の目から見て「似合っている」と評価されることが重要なものなのだ。だから、他人の意見を聞きながら買い物をすることが必要であり、また楽しみでもある。

 ファッション・ショッピングのこういった特性を理解し、イーベイでは、「ソーシャルな買い物」を可能にする機能を次々と取り入れている。

 例えば、フェイスブックのウォールに自分が良いと思った商品を載せ、友人の意見を聞いたり、投票を募ったりできる機能。これは、フェイスブックにモバイルでアクセスし、友人や家族と四六時中「いつもつながっている」生活を送るユーザー層(ソーシャル・カスタマー)が主流化しつつあるからこそ意味があるサービスだ。リアルタイムに近い形で意見を交換し、まるでショッピング・モールを一緒にブラウズするように、商品の見せ合いっこをし、購買意思を下すことができる。

 こういう機能がもう少し普及すると、「彼氏」や「夫」という立場にある男性たちがショッピングのお供として街に駆り出されることは少なくなるのではないかと思うのだが……。女性たちが街に繰り出し、ウキウキとお喋りや試着を楽しんでいる間に、男の人たちは家でゴロゴロしたり、ホームセンターで自分の趣味の買い物に勤しんだりすることができるのでは。

 そんなことを思い巡らしてみたが、女性にしてみれば、試着室の外に男性を待たせておいて、1つの服を身に付けるたびに、「これ、どう?」と聞いてみること自体に「ソーシャル」な楽しみがあるのだろう。つまり、どんなに「ソーシャル・ショッピング」や「スマートフォン」のテクノロジーが発達しても、試着室の外で手持ち無沙汰に連れを待つ男の人たちの姿はなくならないということになる。

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