“職人萌え”ツアーはいかが? 新規投資ゼロ円の街おこし相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年07月21日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

新規投資ゼロ円

 帰京した息子から話を聞いたあと、筆者ははたと気付かされた。小説の取材で東北各地を頻繁に訪れるたび、筆者は地元食堂や居酒屋で必ず郷土料理やB級グルメを食べる。

 現地の人からすれば「当たり前すぎる」とされる食材や麺類、丼物の類いだが、口の卑しい筆者には、ご当地ならではの一級品が多数あった。筆者が感じた新鮮な驚きは拙著にそのまま記してある。

 昨今のB級グルメブームの背景には、こうした地元と他所者のズレがある。要するに、視点の違いなのだ。話を筆者の息子に置き換えてみる。PCに向かうことが仕事の父親、そしてパワーポイントでプレゼンすることが生業の母親のもとで生活していると、息子にはモノづくりという感覚が全くないうえに、これに触れる機会もなかった。今回、黙々と働く職人さんたちと、でき上がった製品の出来映えの素晴らしさは、子供心に相当響いたはずなのだ。

 実は、筆者が今回記した内容は、地元メディア関係者に既に伝えてある。街おこしのために、日夜アイディアを求めていた彼らには、筆者が指摘した「視点の違い」が面白い考えに映ったようだ。

 本欄でも以前指摘してきたが、多くの地方都市が街おこしと観光客誘致に躍起だ。特に、新たに“ハコモノ”の観光施設を建設したり、怪しげなコンサルタントに高額のフィーを払っているケースも多数に上る。

 筆者の地元である燕市や三条市にはモノづくりの職人がたくさんいる。彼らの仕事ぶりを見学すること自体が第一級の観光資源であり、街のウリに他ならないと筆者は確信している。

ステンレス地金からナイフをプレスしている工程

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