全国8000教室、個別指導塾フランチャイズ最前線を行く(4/5 ページ)

» 2011年07月20日 08時00分 公開
[今野篤,INSIGHT NOW!]
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市場の多角化に乗り出した各社の新事業戦略

 FC塾は2つの顧客を持つ。一方は未来のオーナーになる加盟希望者。もう一方は生徒である。つまり、加盟者に対して訴求力のあるFCパッケージになっていなければならないし、生徒を獲得できるだけの商品やサービス力がなければならない。そのため、各社ともに本部機能やFCパッケージ、商品や周辺サービス(付加価値)の差異化に熱心である。

 そこで、今後の各社の方向性をプロットしたのが次図である。横軸は新商品やサービスといった事業の多角化を表す軸、縦軸は地域拡大といった市場の多角化を表している。事業の多角化は顧客の対象年齢層の拡大、市場の多角化は新市場での展開の様子を示した。塾名の後のカッコ内には、筆者が推測する今後、各塾のキーになり得る主な動きを示した。

主なフランチャイズ塾戦略マップの一例

 事業の多角化、市場の多角化ともに目立つのが小資本開業である。日本経済が縮小均衡時期に突入したのなら、この動きはますます加速しそうだ。

 単に小資本で加盟者を集めるだけでなく、手厚い開業サポートで加盟者の不安を取り払い、教室数展開を狙うのがSSS進学教室だ。営業スキルが高くないとできないサポートである。まさに開校請負人とも言えるだろう。個別指導以外のFCパッケージを教室に併設して集客を狙うのが、ITTO個別指導学院、明光義塾、スクールIE、ガウディア、東進こども英語塾だ。

 数年前までは、教室に併設するパッケージと言えば、英会話やPC教室が中心だったが、時代背景を受けて学童タイプや英語教室が増えてきた。流行のデジタル教材を活用するのは、個別指導のセルモや、ハイブリッド型授業をうたうフィスゼミだ。デジタル教材も、IT技術の進化とともに拡大傾向にあり、今後の主流になることはまず間違いないだろう。

 今後多彩なパッケージが出てくると、1つの塾に複数のパッケージを導入するケースが多くなって行きそうだ。本部との契約上の問題は残るものの、ブランドやパッケージをうまく組み合わせ、トータルコーディネートが成功すれば、FCであってもオリジナルな魅力ある塾創りができる。

 このように、各社ともそれぞれの思惑があり、当然戦略も戦術も違う。しかしながら、少子化と市場の寡占化がさらに進めば、FC塾市場も激戦から逃れられないことは間違いない。FC塾市場はビジネスモデルの変革期に入ったと言えるだろう。

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