全国8000教室、個別指導塾フランチャイズ最前線を行く(1/5 ページ)

» 2011年07月20日 08時00分 公開
[今野篤,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:今野篤(こんの・あつし)

経営教育研究所代表。教育業界に16年間在籍。大手学習塾で講師、スクール・ディレクター、スーパーバイザー、FC部門を歴任。教育ベンチャーの立ち上げ、経営修士号取得を経て、2009年に経営教育研究所を設立。次世代教育の探求と経営コンサルティングで活動中。


 明光義塾や東進衛星予備校から始まった塾のフランチャイズ(以下、FC)も、今や急激に増え続け、FC塾がない町を探すのが難しいと言っても過言ではない。ところによってはコンビニと数を競うほどである。それもそのはず、今回の調査によると、FC塾を展開している企業は80社あまり、その教室数は8000以上になった。

 総務省の事業所・企業統計によれば、学習塾の教室数は約5万であるから、全学習塾教室数の約2割近くがFC教室になる計算だ。『学習塾白書2011─2012』によると、学習塾全体の業界売上規模は1兆3020億円だから、学習塾FC市場規模は約2600億円になる。学習塾の全教室数はここ15年間、5万前後で横ばい状態が続いているが、FC塾教室数は年々増加している。これは個別指導専門でFC展開する企業に加えて、集団指導塾や異業種、新興企業からの参入が相次いだからだ。

 個別指導のシェアは2006年の学習塾白書、個別指導調査開始以来増え続け、2010年は41.24%まで上昇した。少子化に伴うライフスタイルの変化とともに、教育に対する価値観が変わってきたことが原因だ。さらに、ここ数年で一気に増えた小資本で開業できる個別指導FCの台頭もあって、この傾向はしばらく続くものだと思われる。また、小学校への英語授業導入、IT技術によるデジタル教材の進化、学童保育への民間参入など、FC塾展開は個別指導に限ったことではなくなってきた。

 本稿では、現在のFC塾市場トレンドを追うとともに、一体いまFC塾業界で何が起きているのか、取材を通して徹底検証してみた。

4つのFC塾モデルと今後の展開

 2010年に筆者が行った調査によると、教育サービスのFC展開をしている企業は、学習塾55社と習い事22社、合わせて77社にのぼる。そのパッケージは、個別指導、学習教室、予備校、幼児教育、英会話、英語教室、PC教室、学童など多岐に及ぶ。そこで、現在ある主なFC塾のモデルを大きく4つのグループに分けて次図のように整理してみた。

主なフランチャイズ学習塾のタイプ

 2010年から一気に教室数を伸ばしているのは、個別指導のセルモ(法人名:エデュケーションネットワーク、大阪市東淀川区)やSSS進学教室(サンマエデューション、京都府八幡市)など新規に参入する「新興グループ」で、どの企業もこれまでにない方法で、既存のFCと一線を画すビジネスモデルで展開を進めている。

 東進衛星予備校(ナガセ、東京都武蔵野市)、トライプラス(TRGネットワーク、東京都千代田区)やECCベストワン(ECC、大阪府北区)など、塾以外の業種から参入してくる異業種グループは、自社のコンテンツやノウハウを、巧みに塾用のFCパッケージに切り替えて業界に切り込んできている。

 個太郎塾(個学舎、東京都文京区)、城南コベッツ(城南進学研究社、川崎市川崎区)、京進スクール・ワン(京進、京都市下京区)などの集団指導塾から参入する「集団グループ」は、企業規模を背景に、順調に教室数を伸ばし続けている。

 明光義塾(明光ネットワークジャパン、東京都新宿区)、ITTO個別指導学院(ジー・エデュケーション、愛知)、スクールIE(拓人、東京都中央区)、名学館(名学館、東京都港区)、ペガサス(ペガサスプランニング、福岡市博多区)、学研CAI(学研エデュケーショナル、東京都品川区)などの「老舗グループ」は、これまで培ってきたノウハウを生かし、次世代のFCビジネスモデルの構築に着手している。

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