コラム
» 2011年07月15日 12時26分 UPDATE

松田雅央の時事日想:なでしこジャパンは世界の常識を変えることができるのか (1/3)

サッカー女子ワールドカップで、日本代表のなでしこジャパンがドイツ、スウェーデンといった強豪を破り、決勝進出を決めた。ドイツメディアの日本評価は高まっているが、なでしこジャパンは世界の頂点に立つことができるのだろうか。

[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 サッカー女子ワールドカップ準決勝で日本代表なでしこジャパンがスウェーデンを3−1で破り初の決勝進出を果たした。準々決勝のドイツ戦がなでしこジャパンの名を世界に知らしめる勝利ならば、スウェーデン戦はその強さを世界に認めさせるものだった。ドイツメディアの日本評価はうなぎ上りに高まっている。

ドイツ――はかなく消えた夏の夜の夢

 正直なところ、筆者は準々決勝で日本がドイツに勝てるとは予想できなかった。「本場ドイツには勝てないだろう」という予断を持ち日本の実力を見誤っていたことを恥ずかしく思っているが、言い訳がましく付け加えるならば、ほとんどのドイツ人も同様に考えていたはずだ。

 なでしこジャパンが世界に通用する力をつけてきたとはいえ、ドイツ代表は世界に名だたる強豪。これまで4回開催されたオリンピック女子サッカーでは3位が3回。5回開催されたW杯では優勝2回、準優勝1回、4位1回、それも直近の2回で優勝。今回のW杯も予選リーグ3戦全勝、ここまで国際試合15戦不敗などなど、実績を挙げれば挙げるほどその強さが際立つ。

 試合後、ピッチ上で選手が円陣を組みナイド監督が言葉をかけていた。その後のインタビューで明かしたところでは「すべてやったが残念ながら勝てなかった。これがサッカー。日本のほうがすぐれていたということ。日本に対してリスペクトを持ち、これからも勇気を持って先へ進もう」と語ったそうだ。

 ドイツ選手の落胆はむろん強烈だ。GKのアンゲラーは「もう1週間(W杯で戦うことを)予定していたのに……」。

 ドイツの敗因についてはさまざまな分析があるものの、どれも結果論に過ぎず説得力に欠ける。ただひとつ、筆者が感じたのはドイツ代表の油断と焦り。ドイツにとって準々決勝は、決勝への通過点に過ぎなかった。当然勝たなければならないし、勝てると思っている試合が進むなか、取れそうで取れない得点が焦りを加速させた。

 日本人としてドイツ戦の勝利は手放しに嬉しいが、ドイツ在住の身としてはドイツ代表の敗退が残念に思え、複雑な気持ちだ。日本がドイツを破り、「在独日本人がイジメられるのでは?」と質問されることもあるが、それは心配のし過ぎ。震災の傷深い日本の快進撃は静かな共感を呼んでいる。

 ドイツはこの敗戦で2012年ロンドンオリンピックの出場権まで失った。欧州の出場枠は3カ国で、開催国枠イングランドを除けば2カ国。今回のW杯が選考試合を兼ねており、準決勝進出を決めたスウェーデンとフランスがオリンピック出場ということになる。ドイツ代表にとっては次回のW杯を目指した長い準備が始まる。

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