連載
» 2011年07月15日 08時00分 UPDATE

吉田典史の時事日想:社長が営業をする会社は危ない!? (1/3)

あるコンサルタントから「クライアント先の企業でトップセールスが増えている」と聞いた筆者。トップセールスをすると、契約が決まりやすくなるメリットがある一方、営業組織が育ちにくくなるデメリットもある。そうした企業のトップはどのようなことを考えているのだろうか。

[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 数日前、コンサルティング会社の社長と役員、そして私の3人で食事をした。2人とも40代後半で人事を得意とするコンサルタント。そのキャリアと実績は、業界でベスト10に入ると言われる。

 社長が興味深いことを言い始めた。

 「2008年秋のリーマンショック以降、クライアント先の企業で“異変”が起きている。社長自らが営業をするトップセールスが増えている。不況が長引くから、経営状態が悪い。まして、この震災。だから、営業部に稼いでほしいと願う。ところが、それができない。そこでいよいよ、社長が営業をせざるを得ない」

 クライアント先企業の規模は、社員数が150人から1500人前後まで多岐にわたる。このうちの5社に1社がここ数年、社長が全国を飛び回り、営業を行っているようだ。特に社員数が300人以下で、売り上げが50億円以下の会社に集中しているという。

社長が営業をすると、契約が決まりやすい?

 その理由を尋ねると、社長の横に座る役員が答えた。このコンサルタントは、業界では実績はおそらくベスト5に入る。

 「300人以下の会社の多くは、組織が未熟。人の育成もあまりできていない。育てる人のレベルも高くはない。こういう組織は不況が長引くと、もろい。営業部が組織として動くことができない。各自がバラバラで動くから、ムリ・ムダ・ムラが非常に多い」

 時折、20〜30代の経験の浅いコンサルタントが、「大企業も経営が苦しい」とか「大企業のビジネスモデルは古いから、時代についていけない」と言う。私がその見方について聞くと、このコンサルタントらは「実態を知らなさすぎる」と切り捨てる。

 「大企業の苦しみなど、たかが知れている。300人以下の会社の多くは、苦しいことの極み。特に売り上げ30億円以下は相当にマーケティングや人材育成などがしっかりしていないと、5〜10年以内に息絶え絶えになる。だから、社長は恥も外聞もなく営業をする。それは“使命感”とも言える。その行為は間違っていない」

 トップセールスは、確かに効果があるのだという。営業部の課長やそれ以下の部員が何度も相手先の会社に足を運び、交渉すると契約成立に時間がかかる。当然、経費も費やされる。しかも、契約額はそれほど大きくはない。その間にも、部員らには毎月の給与、さらには賞与まで支払う必要がある。

 一方で、社長が大きな額の契約が見込まれる会社に出向くと、対応する相手も、社長か役員になる。その時点ですぐに「YES」か「NO」かが決まる。そこで「なんとかお願いします」と頭を下げると、契約は比較的スムーズに成立するのだという。ここまでの話で判断すると、時間と経費という点から考えてもメリットが大きいように思える。

       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -

ITmedia 総力特集