「原発解散」……これは愚だ藤田正美の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年07月11日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 7月6日の衆議院予算委員会、菅首相は原発の安全性を確かめるために「ストレステスト」を行うことをこれまた唐突に表明した。海江田経産相が玄海原発の再開を要請したばかりだというのに、そのハシゴを外したのである。ストレステストと一口に言っても、その内容は何も決まっていない。欧州でどのようなことをしたのかを参考にこれから決めようというのである。

 ストレステストをすれば、その結果が出るまでには相当期間かかるはずだ。結果を分析して問題があれば対応して、それをまた検査してということになれば、日本の原発が来年桜の咲くころにはすべて停まっているなどということにもなりかねない。それで日本の電力需要がまかなえるならばいいかもしれないが、30%もの電源を失って本当にまかなえるのかどうか。

 「発電能力を全部足し合わせると、十分にある」という議論をする人もいるが、まさか稼働率100%というわけにもいくまい。どのような発電機であれ定期点検は必要である。国会でも「埋蔵電力6000万キロワット(原発60基分)」という議論も出ていたが、その一部でも恒常的に使うことになれば、それ相応の設備が必要になるはずで、すぐに何とかなるという話ではない。

 菅首相がストレステストを突然言い出したのは、ちまたで言われるように「原発解散」を目論んでいるからと解釈するのが自然なように思える。「原発、是か非か」で解散すれば民主党が勝てるチャンスがあるかもしれないと考えるからだ。小泉元首相がやった「郵政解散」と同じ、シングルイシュー選挙だという声も聞こえる(これは妙な議論である。郵政民営化は首相になる前から主張していたことだし、首相になってからもずっと議論をしていた。唐突に言い出したことではない。それに国会でもさんざん議論されていた)。

「原発解散」はあるのか(写真と本文は関係ありません)
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