“給料泥棒”のコストを計算してみた吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年07月08日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

人事部は社会保険料について説明するべき

 このあたりについて、野田さんはこう言う。「会社は給与の明細書を社員に渡せば、その内わけなどの説明を終えたと考えているのではないか。そのこと自体に問題はないが、理想を言えば、人事部や総務部が社員たちに給料の内わけをそれぞれの社会保険料ごとに説明することが望ましい」

 余談だが、会社員がこの仕組みやこれらの金額を認識し、各自で支払うようになると、国政や自治体に対しての意識は相当に変わるだろうと、私は思う。納税者としての意識が強くなり、今のような感情論による、一過性の批判は消えていくのではないか。むしろ現実に即しつつ、痛烈で長きに渡る批判になるのではないか。それが政治や社会を変えていくことになりうる。その意味で、私は「会社員自らが社会保険料などを支払う仕掛けを作っていくべき」と考えている。

 なお、次のデータも野田さんの作成のものだが、こちらは毎月手取り25万円を受け取っている社員を想定している。見方は前述したデータと同じである。

 毎月手取り25万円の場合

  • 給料額面……30万円
  • 源泉所得税……△6820円
  • 健康保険料……△1万4220円
  • 年金保険料……△2万4087円
  • 雇用保険料……△1800円
  • 給料手取り額……25万3073円(従業員に支払い)

 上記のケースの税金、社会保険料支払額

  • 源泉所得税……6820円(100%従業員負担分。会社が納付代行)
  • 健康保険料……2万8440円(うち50%部分の1万4220円は従業員負担分。従業員負担分と会社負担分を会社が合わせて納付)
  • 年金保険料……4万8174円(うち50%部分の2万4087円は従業員負担分。従業員負担分と会社負担分を会社が合わせて納付)
  • 児童手当拠出金……390円(100%会社負担額)
  • 雇用保険料……4650円(うち1800円は従業員負担分。従業員負担分と会社負担分を会社が合わせて納付)
  • 労災保険料……900円(100%会社負担額)
  • 支払額合計……8万2554円

会社負担額合計……33万5627円→×12カ月=402万7524円(年間)

※扶養0人、40歳未満(介護保険料の負担なし)、東京都、協会けんぽに加入、通勤手当はないものとして計算。雇用保険料率適用にあたっては一般の事業に該当。労災保険料率適用にあたってはその他の事業のその他の各種事業に該当。

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