第50鉄 小湊鐵道と養老渓谷とわらじトンカツ――房総横断ローカル線紀行(前編)杉山淳一の+R Style(4/5 ページ)

» 2011年07月07日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

いすみ鉄道に乗り換えて大多喜へ

 探勝バスで上総中野駅に戻る。ここからは「いすみ鉄道」で先へ進む。いすみ鉄道は前述の国鉄木原線を経営移管した会社だ。赤字ローカル線として木原線は廃止と決まったけれど、千葉県と沿線自治体が出資して「いすみ鉄道」を設立して存続させた。ちなみに木更津側は久留里線として建設され、現在もJR久留里線として上総亀山まで運行している。

 いすみ鉄道もディーゼルカーだが、小湊鐵道より新しい車両である。これはいすみ鉄道が国鉄木原線から転換されたときに車両を新しく導入したから。新車と言っても、バスの部品を流用して作られたお買い得品。黄色い車体にはムーミンのイラストが描かれている。車内にもムーミンのキャラクターがたくさん描かれて、運転台の横にぬいぐるみも置いてある。親しみやすい鉄道になりたい、という思いを込めたアイデアだ。

 私のそばに幼児とママが乗っていた。「ほら、ムーミンさんいるわよ」「ほんとだー。あれ、パパはどうしたの」「パパは先にクルマで行って駅で待ってるの」。おお、ムーミン列車は成功しているようだ。用事がなくても幼児とママが乗ってくれていた。ちなみに、いすみ鉄道のムーミン企画は車両だけではなく、沿線の鉄橋の下でムーミンが釣りをしていたり、池の畔でスナフキンがキャンプをしていたりするらしい。車内に観光客が多いな、と判断すると、運転士さんが徐行して「見えますよ」と教えてくれるという。

 小湊鐵道は養老川に沿っていた。いすみ鉄道は夷隅川に沿うルートだ。両路線が接続する上総中野駅が、ちょうど房総の分水嶺になっている。いすみ鉄道の方は線路も川もそれぞれ気ままに蛇行しているから、沿うというより絡みあうようで、鉄橋がいくつもある。緑の中に線路1本。のんびりとした景色の中を、ムーミン列車が軽快に走っていく。途中の駅にはあじさいが植えられていて、もうすぐ満開になりそうだった。

上総中野駅に戻っていすみ鉄道へ
車内にスナフキンがいた
緑がどんどん深まっていく

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