第50鉄 小湊鐵道と養老渓谷とわらじトンカツ――房総横断ローカル線紀行(前編)杉山淳一の+R Style(3/5 ページ)

» 2011年07月07日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 車窓の緑はさらに深くなり、列車は養老渓谷駅に到達。この駅はその名の通り、養老渓谷観光の中心になる駅。見所は3方向あって、養老川沿いの滝巡りルート、蕪来川方面の弘文洞跡ルート、大福山展望台と梅ヶ瀬ルートである。今回は「養老渓谷といえば養老の滝だよね」というわけで、滝巡りルートにする。ところが、養老渓谷駅から養老の滝とされる粟又の滝までのバスは10:40が始発でちょっと遅い。午前中に滝巡りをしたいなら、終点の上総中野から出ている探勝バスがおすすめ。こちらは09:05発の便があり、粟又の滝に9:20に着く。ただしこの便を含めて、探勝バスの増発は観光シーズンのみ。新緑の時期は日曜日だけ。出かけるときは事前に運行日をチェックしよう。

上総中野駅に到着。いすみ鉄道と小湊鐵道はほとんどの列車が接続している
上総中野駅の駅舎。竹を割ったような建物はトイレ

養老川を散歩、身体中の酸素を入れ替える

 養老渓谷の滝巡りは粟又の滝(あわまたのたき)から始まって下流へと進む。「養老渓谷といえば養老の滝」と思ったけれど、あの「滝の水がお酒になっちゃった伝説」は岐阜県のほう。こちらは養老川に注ぎこむ滝がたくさんあって、どれもお酒にはならない(岐阜県の方もお酒にはならないと思うけど)。ちなみにもっとも大きな粟又の滝はなだらかな斜面で、水が注ぎこむところに泡が立つ時もあるという。でもこれはビールではなくて、温泉に似た成分が泡を作るそうだ。これか粟又の滝の名の由来とのこと。

養老渓谷、粟又の滝
昇龍の滝。天空へ登る龍のたてがみのよう

 道路脇から滝へ降りるまではちょっと険しく、雨上がりの日は滑りやすい。滝まで降りれば、そこからの滝巡りは遊歩道が整備されている。千代の滝、万代の滝、昇龍の滝、小沢又の滝を眺めるコース。それぞれの滝が自然の庭園のようで趣がある。滝の名前は取ってつけたような気がしたけれど、昇龍の滝だけは感心。じっと見つめていると、確かに天空へ登る龍のたてがみのようだった。うまいネーミングだ。そして、これらの滝が過去から現在までずっと水を注ぎ続けているというそのことが感慨深い。アタリマエのことなのかもしれないが、水が絶えないってすごい。自然に対して謙虚になってしまう。

 小湊鉄道のサイトで紹介されていた「滝めぐりコース」は、「粟又の滝バス停」から川へ降り、養老川を歩いて小沢又の滝まで行き、道路に上がって「原の台バス停」までを歩く約3.5km。所要時間の目安は約50分。川を下る方向のほうがラクかな、と思って、奥にある粟又の滝までバスで行ったのだが、川沿いの遊歩道は平坦だった。小沢又の滝で道路に上がらず、また同じルートを辿って往復した。滝の水が砕けてマイナスイオンがいっぱいだし、緑が豊かで森林浴気分。釣りをする若者たちや、ザリガニを採っている親子、お散歩中のワンちゃんに挨拶して、2時間ちょっとの散歩を楽しんだ。適度な運動と深呼吸。身体中の酸素をすべて入れ替えたような清々しい気分になった。

マイナスイオンいっぱいの散歩道を歩く
万代の滝

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