必ずやって来る“国債大津波”を、政府は想定しているのか藤田正美の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年07月04日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

日本経済の根幹に関わる問題

 日本は実はこれらの国を上回る借金を抱えている。ただそれがギリシャのようなことにならないのは、まだ経常収支が黒字であること、つまり国の借金は自分で賄えるような状態にあるからだ。その意味では震災の発生後、貿易収支が赤字になっているのが気になる。もちろんこれは一時的な現象であると誰もが思っているから、大きな問題にはなっていない。しかし現在の民主党政権が、財政再建についてきちんとしたロードマップを描かない限り、日本がやがてギリシャになる日が来る。

 ある日、日本国債が売られて、相場が値下がり。国債を大量に抱える金融機関は、評価損が膨らむのを恐れて、慌てて処分に走る(もし国債の利回りが1%上昇すれば、地銀の評価損は3兆円に近いという)。市場は売り一色に染まり、大混乱。そして日本政府は予定していた新発債を発行することができず、行政機能はまひしてしまう。実際に市場が動き始めたら、それを止めることは不可能だ。米政府が「市場との対話」を重視し、市場が信頼を寄せる人を財務長官にしてきたのもそのためである。

 日本が消費税を10%に引き上げたとしても、そのときの税収増は国税と地方税合わせて約12兆円ほど。現在でも国債利払いを除いたところでの基礎的収支の不足分は30兆円弱あるのだから、これを埋めるにはまったく足りない。法人税は国際競争力の観点から、税率を下げることが必要だ。課税ベースを広げて(つまり特別措置などを廃止して)何とか税収としては元の税収を確保するのが精一杯。所得税の累進カーブを引き上げるとか、課税最低限の引き下げ、相続税の引き上げなどを組み合わせても、基礎的収支をバランスさせることはできまい。

 その理由として、社会保障費が高齢者の絶対数が増えるために毎年1兆円以上のペースで膨らんでいくからだ。もう1つは、日本の現在の状況は、景気循環の中における不況ではなく、「右肩下がり」の経済構造であるから。したがって景気がよくなって黙っていても税収が増える(企業は売り上げが伸びて利益があがり、個人は所得が増える)というような状態を望むことはできない。

日本は「右肩下がり」の経済構造(写真と本文は関係ありません)

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