必ずやって来る“国債大津波”を、政府は想定しているのか藤田正美の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年07月04日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 税と社会保障の一体改革案がまとまった。菅首相は「まさに歴史的決定だ。ここからが本当の始まり」とし、与野党協議を呼びかけると語った。しかし「歴史的」というにはこの一体改革最終案は実に不十分だと思う。それに与野党協議というのならなぜ自民党の議員を一本釣りするようなことをやったのか(それも直前に)、理解に苦しむ。

 この一体改革案に反映されていないのは、現状に対する危機感だ。消費税を上げる時期を明記するかどうか(2015年と書くのか、2010年代の半ばと書くのか)で与党側ともめたことなど、危機感がないことを如実に示すものだと思う。

 今年3月末の国の借金は924兆円。日本のGDP(国内総生産)の約2倍にあたる。地方が抱える借金も合わせれば、その合計額は優に1000兆円を超える。よく言われるようにこれは先進国中最悪の財政である。

 政府債務危機に陥っているギリシャ。パパンドレウ政権は何とか信認を勝ち取ったが、財政を再建する道筋は見えていない。もちろんやれることは2つしかない。1つは財政支出の削減、もう1つは増税である(もちろん経済の活性化による税収の増加があれば助けにはなるが、経済が右肩上がりで拡大することが期待できないのだから、「税の自然増収」を計算に入れることは難しい)。

 財政支出をカットするとなると、ギリシャのような国(つまり国の支出がGDPの大きな部分を占めているような国)では当然、職を失う人が多く出る。そうなれば経済全体に与える影響も決して小さくない。だから多くの国民が反発し、暴動のような有様になった。このギリシャをどう救うのかがEU(欧州連合)の大問題となっている。他にもポルトガルやスペインなどのリスクが言われているが、もしスペインが債務危機に陥るようなことがあれば、EUそのものの存亡の危機になるばかりか、ひいては世界経済が再び大打撃を受けることになるだろう。

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