なぜ信用できないのか? 政府が発表する原発情報に原口一博×武田邦彦 それでも原発は必要か(1)(5/5 ページ)

» 2011年07月01日 09時10分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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原口:もしそれが本当の理由であれば、本末転倒です。未曾有の事故が起きているのに、動かせないことを理由に、動かせないようにした。20ミリシーベルトに決定した人たちは、それだけ放射能のリスクに子どもたちをさらしていることを本当に分かっているのか。これも本当に大きな問題です。

 今でも3月20日のことを、よく覚えています。このタイミングで復水器を付けなければ、汚染水が海に流れてしまう。計算すれば分かることですから。菅首相に「だから今やらなければいけない」と訴えると、「分かった」と言ってくれた。しかし放射線量が高いことと「どこの管に付ければいいのか分からない」と話していました。一国の首相が、そんな細かいところまで差配する必要はないんです。

 僕は「今やってくれ」と言いましたが、混乱したんでしょうね……菅首相は決断できませんでした。そして汚染水は3月23日にもれてしまいました。

 今回の事故を大きくした理由の1つに、政府が「東電まかせ」にしていることが挙げられます。まず政府は、福島第1原発の収束予算を立てなければいけない。その予算で、徹底的にありとあらゆることをやっていかなければいけません。国土交通省は原発の地下を全部コンクリートにする準備を進めています。その準備は3月から始めているのに、いまだにゴーサインが出ません。

 僕が、なぜ菅首相に辞めてもらいたいかというと、大きな権限を持った人間が決断をしないから。このままだともっと被害は大きくなり、日本は100年の悔いを残すかもしれない。もちろん地震という天災の面はありますが、東電の事故、そしてその後の処理については人災です。

 →続く

プロフィール

原口一博(はらぐち・かずひろ)

1959年佐賀県生まれ。1983年東京大学文学部心理学科(第4類心理学)卒業。1987年佐賀県議会議員当選。1996年衆議院議員に当選。2003年民主党副幹事長。2009年総務大臣。この間、郵政民営化に関する特別委員会筆頭理事、総務委員会筆頭理事、拉致議連(北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟)副会長などを歴任。現在は衆議院総務委員長を務める。

著書に『ICT原口ビジョン』(ぎょうせい)、『平和 核開発の時代に問う』(ゴマブックス)などがある。

武田邦彦(たけだ・くにひこ)

1943年東京都生まれ。1966年東京大学教養学部基礎科学科卒業後、旭化成工業に入社。1986年より同社ウラン濃縮研究所長を務め、自己代謝材料の開発に取り組む。1993年より芝浦工業大学工学部教授、2002年より名古屋大学教授を経て、2007年3月より中部大学総合工学研究所の教授。また内閣府原子力安全委員会の専門委員などを歴任する。

著書に『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(洋泉社)、『偽善エネルギー』(幻冬舎新書)のほか、原発問題をテーマにした『原発大崩壊! 第2のフクシマは日本中にある 』(ベスト新書)などがある。


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