なぜ信用できないのか? 政府が発表する原発情報に原口一博×武田邦彦 それでも原発は必要か(1)(1/5 ページ)

» 2011年07月01日 09時10分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 福島第1原発で事故が起き、日本全体が揺れている。放射性物質による被害は福島だけにとどまらず、東北そして首都圏にも及んでいる。

 東京電力の記者会見を見ていて「情報を隠しているのでは」と不信に感じた人も多いはず。また枝野官房長官が「直ちに健康に影響がない」とコメントするたびに、不安に駆られた人もいるだろう。なぜ国民は政府が発表する情報に、不信感をもっているのだろうか。この問題について、民主党の原口一博議員と中部大学の武田邦彦教授が語り合った。全8回でお送りする。

情報をきちんと出していたのか

――東京電力の福島第1原発で事故が起きましたが、国民の多くは「政府はきちんと情報を出していないのでは」と不信に感じているのではないでしょうか?

原口一博議員

原口:率直に言って、その通りだと思います。この問題については大きく分けて、2つを考えなければいけません。1つは情報開示の問題。もう1つは事故に対する指揮系統の乱れです。

 福島第1原発で事故が発生しましたが、僕は「政府の初動の対応、そしてその後の対応は間違っている」と言ってきました。今回のように「レベル7」の事故が起きたときには、ミニマックス原理(各選択肢において、最悪の結果を見つける。その中で、一番よい結果をもたらす選択肢を選ぶ)で行動しなければいけません。

 例えば避難地域について、政府は原発からの距離によって決めています。またパニックを恐れ放射性物質の拡散予測システム「SPEEDI(スピーディ)」のデータも、ものすごく遅れて公表しました。こうした政府の対応は、失敗だと思っています。

 僕は総務大臣を務めていましたが、総務省には災害が起きた場合の「危機管理ルーム」があります。そこには災害の情報を一元化し、マネージメントするためのすべてのモノが配備されている。同じモノが経済産業省などにもあるはずなのに、うまく機能しませんでした。今回は地震、津波、原発――3つの災害が同時に起きた複合災害。官邸のコントロール機能はとても大事なのに、原発の災害については原子力安全委員会の委員長も官邸につめさせてしまった。

 しかし委員長をつめさせてしまうと、そこでの決裁権者がいなくなってしまう。もっと言うと、東電の決裁権者も集めていた。そして原発の事故現場との連絡がうまくいかず、ミスを繰り返しました。いまだに原発の最前線で働く人たちの意見というのは、きっちり入ってきません。

 非常事態に官邸がうまく機能しなかったことで、どのような結果を招いたのか。例えば佐賀大学の元学長・上原春男先生は、原発の冷却系の設計をされていました。上原先生は3月12日に官邸に呼ばれ「海水を間断なく注入し続けてください」と指示しました。また「非常用復水器が停止した」と聞き、上原先生は水素爆発とメルトダウンを予測し、3月13日には「循環冷却装置を作ってください」と言いました。地震直後から海水を注入していれば、ひょっとしたら「非常用復水器の停止」はなかったかもしれません。

 もし3月12、13、14日に、官邸が決断することができていたら、海に大量の汚染水を放出することもなかったかもしれない。汚染水による2次、3次被害を救うことができたかもしれません。またメルトダウンも起きていなかったかもしれません。

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