なぜルネサスは外部から調達するモノの技術開発に投資するのか?(1/2 ページ)

» 2011年07月01日 08時00分 公開
[中ノ森清訓,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:中ノ森清訓(なかのもり・きよのり)

株式会社戦略調達社長。コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供している。


 ルネサス エレクトロニクスが、自らは製造せず生産委託する予定の次世代半導体の製造技術を共同開発する国際企業連合に参加することを決めた。なぜ、自らは手掛けないものの製造技術の開発に手間を掛け、投資するのだろうか? 今回はその理由についてみていこう。

 ルネサスがこの度参加することにしたのは日本企業11社が出資して設立したEUVL基盤開発センター。この企業連合には、世界シェア首位のインテル、2位のサムスン電子、3位の台湾積体電路製造(TSMC)も参加する。

 企業連合の研究開発の対象はEUV(極紫外線)を使った半導体の製造技術。EUVを光源とする露光技術は、シリコンウエハーに回路パターンを転写するのに現行技術の10分の1以下の短い波長の光を使うため、10ナノメートル台の回路線幅に対応できる技術として有力視されている。

 一方、ルネサスは28ナノメートルより小さい回路線幅の半導体は、自社で製造せずTSMCなどに生産委託してコストを大幅圧縮する計画としている。では、なぜわざわざリソースを割いて、自らは製造しない半導体の製造技術の開発に参画するのか。報道によると、他社に製造委託するとしても、技術が分からないと発注が難しいため参加を決めたという。

 「技術が分からないと発注が難しい」

 これは、半導体のような先端技術分野だけの話ではない。直接材のみならず、物流やサービスなどの間接材も含めて、どんな分野にも共通する話だ。

 例えば、荷主の立場に立って物流ネットワークや在庫管理、輸送管理の最適化を行うサードパーティロジスティクスやシステム開発、広告宣伝、人事、経理などさまざまな業務領域において業務委託が一般的になっている。業務領域だけでなく、企業の存在理由そのものや将来を占う企業使命、事業領域の選定、戦略立案すら外部に委託される時代である。

 経営、戦略、物流、システム開発、広告宣伝、人事、経理……どんな分野であろうと、環境認識、コンセプト、技術、ソリューションが日進月歩で変化している。そうした世界で、外部を使いつつ、自らの望むものを手に入れるためには、自らの欲しいものをデザインする力がないと難しい。そのためには、社内に1人はその分野について精通し、ビジョンとその実現に向けた設計図を描ける者が必要である。

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