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» 2011年06月29日 08時00分 UPDATE

それゆけ! カナモリさん:攻める! 「ウィルキンソン ジンジャエール」の深謀遠慮 (1/2)

友人にダンディーな50歳男性がいる。彼は下戸にも関わらず、バーでひとりの時を過ごす習慣がある。カウンターに腰を下ろすとおもむろに「いつもの…」と低い声でオーダーをする。彼の前にスッと差し出されるのが、「ウィルキンソン ジンジャエール」だ。

[金森努,GLOBIS.JP]
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それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2011年6月24日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


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 オトナの炭酸飲料の代表格を1つ挙げるとすれば、それは間違いなく「ウィルキンソン」だ。アルコールの「割り材」としての炭酸水やトニックもあるが、「なるほど! ジンジャーエールって、ショウガが辛いんだ!」と初めて飲むと驚く「ドライジンジャエール」は特にオススメだ。日本では圧倒的なシェアを占める「カナダドライ ジンシャーエール」の甘さに慣れた舌には強烈な刺激を感じるだろう。

 ここで知らない読者も多いと思うので、ウィルキンソンの歴史をおさらいする。ウィルキンソンと聞いて、若い人は外国ブランドと思うかもしれないが、れっきとした国産なのだ。2007年9月5日付大阪読売新聞の記事「宝塚生まれ『ウィルキンソン』 愛され103年、炭酸飲料」によると、「始まりは大日本帝国憲法が発布された1889年ごろにさかのぼる。英国の実業家クリフォード・ウィルキンソン(1852〜1923)が有馬郡塩瀬村生瀬(当時)で狩猟中、炭酸鉱泉を発見。ロンドンの試験場で分析したところ、『世界的に優良な鉱泉』とお墨付きをもらい、1904年、瓶詰にして『ウィルキンソンタンサン』と名付け、国内外で販売を始めた」とある。

 以来、カクテルを作る際の炭酸水として、バーやホテルのラウンジで長く愛されてきた。現在はアサヒ飲料が製造、販売しており、炭酸水以外にも、ショウガの風味が濃いウィルキンソンブランドのジンジャエールが、“大人の味”として、渋いオトナの間で楽しまれてきた。

 さて、飲料の主な販路(チャネル)は、消費者にとって目に付くところでは自動販売機とコンビニエンスストアだろう。各々の販売シェアは35%と25%。では、残りはどこのチャネルなのかといえば、量販店やスーパーだ。2リットル大型容器まで含めれば、総販売量でのシェアが大きくなる。そして、もう1つ忘れがちなのが、料飲店である。

 下戸にノンアルコール飲料は欠かせない。いける口にはカクテルに早変わりだ。ジンジャーエールを用いるカクテルといえば、ウォッカとライムジュースを加えて「モスコミュール」が作れる。ジンとレモンジュースを加えれば「ジンバック」。ジンをラム酒に替えて、砂糖を加えれば「ボストンクーラー」のできあがりである。割り材としてカクテルに用いられる幅は広い。

 そんな夜の街から明るい日の光の下に躍り出たのが、「ウィルキンソン ジンジャエール 辛口 PET500ミリリットル」だ。6月14日に全国発売された。500ミリリットル以下の小型容器飲料の主要チャネルであるコンビニの店頭を狙っている。

 料飲店で出される商品と何が違うのか。「ウィルキン ソンジンジャエール」といえば、緑色の小瓶が有名だ。容量も190ミリリットル。しかし、容器・容量の違いだけではない。オトナにうれしい「カロリーゼロ」なのである。

 しかし、商品のラベルを見ると「0」とか「ゼロ」の表示はない。成分表示を見なければ分からない。なぜ、アピールしないのか。そこにはアサヒ飲料の戦略があるのだ。

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