安くて簡単なエネルギー――地域に供給する“熱”とは松田雅央の時事日想(4/4 ページ)

» 2011年06月28日 11時33分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]
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災害にも強いミニ/マイクロ・コジェネレーション

Holz-BHKW−Vaubanドイツ南西部の都市フライブルクにある中規模の木質バイオマス・コージェネレーション施設。発電量:1406MWh、供給熱量:5511MWh、二酸化炭素排出削減量:1万6771t、木材バイオマス(チップ)の消費量:2万6000m3(いずれも年間)。およそ1000人が家庭で消費する年間電力と、1000世帯の暖房・給湯熱を供給できる

 日本で2006年にパイロットプロジェクトとして建設された発電出力1万kW級の木材バイオマス発電所を見学したことがある。地元の木材チップを使い発電効率は高いが、地域熱供給システムは組み込まれず、残念ながら年間数億円の赤字を出し続けている。CO2排出削減の意義はあっても、それだけでは同様の施設を他に建設する魅力に欠け、発展性もない。地域温水供給システムを作ればいいが、今のところそういうアイデアも社会的な仕組みもない。

 日本とドイツの暖房・給湯エネルギー需要は異なるが、日本でも熱利用のあり方を考え直すべき時期に来ている。エネルギー利用効率の観点からみれば、火力発電所で作った電力を暖房・給湯に使うようなオール電化社会は大変な無駄遣いだ。

 ミニ/マイクロ・コジェネレーションは独立性が高いため、災害時の有用性も魅力だ。設備が無事でプロパンガスさえあれば建物独自に電力と熱を併給できるメリットは計り知れない。ドイツに地震はないため災害時を想定する視点はないが、日本では当然、議論されてよいはずだ。

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