大韓航空のエアバスA380がソウル/成田線に就航秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(6/7 ページ)

» 2011年06月28日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

流ちょうな日本語を操るクルーたち

 フライト中、機内で何人かの乗客に簡単なインタビューを試みた。この日の便に狙いを絞って早くからチケットを手配した人もいれば、A380の就航初便と知らずに乗っていた人も。大韓航空のサービスに対する感想を語ってくれた人も少なくない。

 「海外にはときどき出張に出ますが、英語が苦手なため、どうしても日系の航空会社を使うことが多くなる」と話してくれたのは、生産管理の仕事についているという日本人技術者(56)だ。「外国の航空会社でも日本線には日本人乗務員が乗っていますが、各便にせいぜい1人か2人でしょう。何か頼みたくても、いちいちその人たちを呼ぶのは面倒です。その点、大韓航空は利用しやすいですね。日本人乗務員もほかより多いですし、韓国人の乗務員もちゃんと日本語で対応してくれる。私みたいな人間にはありがたいですよ。みんな、どこで言葉を勉強するのでしょうかね?」

飛行機と空と旅 3〜4名の日本人が乗務しているほか、韓国人クルーも日本語で対応してくれる

 たしかに。彼女たちは、どこでどんなふうに訓練を受けているのか? そのことを知りたくて、私は以前、ソウルの客室乗務員訓練センターを訪ねたことがある。

言葉によるサービスは何よりも大切

 広報スタッフの1人に案内され、語学レッスン室などが並ぶ乗務員訓練センターの2階フロアへ上がると、日本語の単語を合唱する声が奥の教室から聞こえてきた。近寄って、廊下側の窓からそっと中を覗いてみる。

「ご覧になりますか?」

 レッスン中の教室からそう声をかけてくれたのは、韓国人訓練生たちへの日本語教育を担当している日本人専任講師のSさんだ。広報スタッフとともに教室内へ入ると、レッスンが再開された。日本語での挨拶の基本から、乗客に何かをリクエストされた場合の返事の仕方、訓練生同士がクルー役と乗客役に分かれてのロールプレイングなどが進められていく。Sさんはときどきユーモアを交えて教室を盛り上げるため、訓練生たちはみんなとても楽しそう。

 「言葉によるサービスは何よりも大切だと私たちは考えています」と、Sさんは言う。「訓練生たちも、日本人のお客さまに日本の言葉でサービスできるようになろうと、みんな一生懸命です。教えていて、とても張り合いがありますよ」

飛行機と空と旅 訓練センターの一室では、日本語によるロールプレイング授業が行われていた

 大韓航空は2011年6月現在、日本の15都市/24路線へ週253便を運航し、日韓両国の文化やビジネスの“掛け橋”としての役割を果たしている。国内15都市への就航というのは、外国エアラインの中ではもちろん最多だ。乗務員への熱心な日本語教育も、同社が日本を戦略上の最重要マーケットと位置付けている表れだろう。教室では、Sさんが発する1つひとつの日本語のリピートを訓練生たちが繰り返している。その明るい元気な声は、教室を出たあとの廊下にいつまでも響きわたっていた。

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