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» 2011年06月27日 08時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:日本に起業家が少ない理由 (1/3)

しばしば耳にする「なぜ日本には起業家が少ないのか」という話。ちきりんさんはその理由について、「起業家は日本の大組織では耐えられない人がなるものというコンセプトがあるからではないか」と主張します。

[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2009年1月18日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 よく耳にする「日本は起業する人が少ない」という話。

ah_tiki1.jpg 開業率・廃業率の国際比較(2003年、出典:内閣府)

 理由として「シリコンバレーには起業家を支えるさまざまな仕組みがあるが、日本にはない」とも言われますが、では、なぜそういう仕組みが彼の地にはあって、日本にはないのでしょう?

 そんなことを考えていて、思いついたのが次の図です。

ah_tiki2.jpg

「社会適応スキル」とは、受験や就活スキルなどの“さまざまな関門を要領よく切り抜けるスキル”です。そして「自己抑制キャパシティ」は、「どの程度くだらないことに耐えられるか」という能力(?)です。

 例えば、23歳から64歳まで40年間、毎日地下鉄のラッシュでもまれる人生に耐えられ、「こんな資料、誰も読み直さないだろう」と分かっている会議の議事録を何時間もかけて作り、課長に“てにをは”を直されては素直に修正し、部長に印刷がずれてると言われてはインデントの設定をやり直す、そんな仕事に耐えられる人は「自己抑制キャパシティ」が大きいといえます。

 この2つの基準の組み合わせで4種類の人が定義されますが、まず社会適応力があってくだらないことにも耐えられる人(ピンク領域)は、たいてい大企業の社員や公務員になっています。社会適応力があるから受験も就活も乗り切ってそういう組織に入り、そこで行われる超くだらないことにも「何十年でも耐えられる」のでドロップアウトしません。

 次に、我慢強いけれどもテストや面接を巧みに乗り切るスキルを持っていない人(黄色領域)がいます。彼らは社会適応力が低く“余裕のある企業や組織”に入れないため、低賃金でスキル蓄積につながらない仕事をやらされています。それでも我慢強く、どんな悪環境でもワープアと呼ばれるような給与でひたすら我慢して頑張ります。

 3番目にどちらのスキルも低いと(右下、黄緑の領域)、居心地のよい大組織に潜り込むことができず、かといって搾取されつつ働き続けることにも「我慢できない!」ので、ニートやフリーターになります。

 最後に左下の水色の領域の人たちは社会適応力はあるが、我慢強くありません。彼らの一部は最初は大企業に所属するかもしれません。とりあえず、そうできてしまうからです。

 けれど彼らは「我慢」できず、「ありえんだろ、こんな人生!?」と飛び出してしまいます。それでも社会適応力はあるから何とか食べていける。フリーになったり、起業したりする人もいます。

 ちなみに彼らは“つらいこと”に耐えられないわけではなく、“くだらないこと”に耐えられないだけです。なので働く時間が長くても、仕事の中身は「自分が面白いと思えること」と「意味があると思えること」だけです。

 一般的に起業家は、この水色の領域から生まれます。「社会適応スキルは高いけど、あほらしいことには耐えられない。自分の人生の時間は組織のためじゃなく、自分のやりたいことに使いたい!」という人たちが起業家になるのです。

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