冠水、悪臭、ハエ――震災から3カ月、被害が拡大している現実東日本大震災ルポ・被災地を歩く(3/5 ページ)

» 2011年06月25日 10時00分 公開
[渋井哲也,Business Media 誠]

地震後1カ月ごろから1メートル近い地盤沈下

 家の前地区も冠水している。満潮になる7日の朝に訪れたところ、「ちびっこ広場」は全体が冠水していた。周囲の道路はマンホールから水がわき出している。海に近づくと、堤防が機能を果たさないばかりか、地盤沈下もしているために、海水がそのまま陸地に入ってきてしまっていた。

満潮時には水没する石巻市家の前地区(6月8日)
かきの養殖業を営む阿部智哉さん(6月8日)

 近くでカキの養殖をしている阿部智哉さんに話を聞くことができた。「地震当初はよかったが、地震後1カ月くらい経ったらだんだん悪くなって来ている。以前からすると、1メートルくらい地盤が下がったんです。こうした冠水になるのは台風の時ぐらいでした。仕事にも影響が出ます。従業員は車を近くに止められないですし、冠水エリアを迂回するので、今まで通りの行動ができない。桟橋が海に浸かっているので、行くのも大変です。以前は大潮の時だって、ちょっと水に浸かるくらいでしたから。エリアによってもダメージが違うのですが、カキの棚田にも影響がある。もし余震や津波がまたあったら、カキの種をつけ直さないといけない。海の状況が今度、どうなるか。でもとりあえず去年と同じものを作るしかない」

 そう言いながら、阿部さんは心配そうに海を見つめていた。

浸水とハエに悩まされる

 石灰を運んでいる男性に出会った。撒かないとハエが出るという。「撒いてもダメなんだよ。縁の下には撒けないから、消毒してもらわないといけない。トイレにも水が入ってしまう。このあたりは水が引いても、気温が高くなると、ハエがすごい。きょうは撒いてもダメだな、20時くらいまでは冠水しているから。(市の)対応が遅いんだよな。仮設の防波堤ができるという話だが、下水から上がってくるので、海水じゃないかもしれない。けっこう臭いがするし、油もすごい。朝は通勤、通学も大変。浸水しないところまで長靴を履いていく。毎日、海の上にいるようだ」

 杖を使って歩いている男性はこう話す。「歩くのは大変ですね。臭いも激しいね。ハエみたい、ちょっと小さなものが出ている。朝と夜はね、2回海水する。このあたりは、みんな床下浸水ですよ。だから、土盛りをしている。そのうち、防波堤を作ることになっている。市から説明があった。大変なんだね。このあたりは歩けなくなる」

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