冠水、悪臭、ハエ――震災から3カ月、被害が拡大している現実東日本大震災ルポ・被災地を歩く(1/5 ページ)

» 2011年06月25日 10時00分 公開
[渋井哲也,Business Media 誠]

 甚大な被害をもたらした3月11日の東日本大震災。一般的なイメージでは、被害は震災当日が最大のもので、徐々に復興への道を辿って来ているというものではないだろうか。確かに、津波による建物倒壊など、震災による被害の多くは当日が最大であり、自衛隊やボランティアらによって瓦礫が撤去されている。しかし現実には、3月11日以降、徐々に状況が悪化している地域がある。

悪臭、ハエ、地盤沈下――冠水に悩む町

 宮城県石巻市。沿岸部は壊滅的な被害を受けた。沿岸部からやや内陸に入ると、まだ瓦礫が撤去されずに放置されているところがある。市内を自動車で走っていてもそうした光景を目にすることができる。同時にそれに伴って、悪臭が漂っているのだ。ヘドロなどがまだ溜まっているため、風のない日にはなんとも言えない臭いが充満している。夜の繁華街である立町でも、それは同じだ。立町では津波が1階部分までやって来た。

 臭いだけならまだマシかもしれない。衛生状態も悪化している。これから夏に向かい、入梅や台風を迎える。すでに暑い日が多く、ハエなどの虫が多く発生して住民達を悩ませている。

堤防工事も進むが、付近では虫が発生していて住民は悩まされ続けている(6月8日)

 それに加え、石巻市の沿岸部の一部地域では、1メートル近くも地盤沈下した。そのため、海水面が陸地部分よりも高くなっており、満潮時には、家の床下まで冠水してしまうこともしばしば。大潮の際には最も被害が大きくなる。

 どのような冠水になるのか。SNSのGREEでは、「石巻市渡波が冠水する」といった話題が飛び交っていた。そこで私はまず、渡波漁港(石巻市長浜町)に向かった。

 6月7日、渡波漁港付近には人がほとんどいなかった。工事は急ピッチで進んでいたが、はまなす保育園の敷地内にはまだ漁船が打ち上げられていた。

漁船が放置されていた、はまなす保育園(6月7日)
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