日本のパイオニアとされる省電舎でも創業が1986年であり、日本の省エネルギー業界は発祥からいまだ四半世紀という発展途上の若い業界であることが分かる。
それは一方では将来に向けての成長可能性を示唆(しさ)しているが、その一方で発展途上であるがゆえのさまざまな課題が露見しているようだ。
「顧客企業の省エネルギーを考える場合に大事なことは、対象となる建物に関して光・水・電気・熱など、あらゆるエネルギー源に対してアプローチし、『それぞれのエネルギーをどの程度削減することで、全体として最も効果的で効率的な省エネルギーが実現できるか』という“全体最適”志向に立脚したトータル・デザインを行うことです。
しかし実際には、例えば水であれ、光であれ、電気であれ、熱であれ、そうした特定の省エネ対策を本来得意としてきた企業が『うちもトータル・デザインができます』と言って、建物全体の省エネルギー案件を受注するケースが増えています。
そうした受注の場合、どうしても自社が得意とする分野の設備改善(改修)に目が行きがちとなりますから、おのずと得意分野のみの省エネルギーに偏りがちです。ところが、そうした省エネは結果としてほかのファクターのエネルギー消費量を増やしてしまうなど、“部分最適”に終わってしまうケースが少なくありません」
つまり、「環境」や「エネルギー」といったキーワードと接点を有するあらゆる業種の企業が、省エネルギー業界に参入し、その中にはESCO事業者としての適格性に欠ける仕事をしているケースが多々存在しているということだろうか?
「日本ではこの業界の位置付けがいまだ明確ではないという問題があります。省エネルギーのトータル・デザインに関する高い専門性を有する企業が集まって業界を形成するのが本筋でしょうが、残念ながら日本の場合はまだそこまでは行っていないのが現実です。
空調が得意な企業は空調を中心に、水が得意な企業は水を中心に、そしてLEDが得意な企業はLEDを中心に省エネルギーのトータル・デザインをやろうとし、それを通じて自社の関連商品を販売しようとしているケースが非常に多いです。
ESCO事業の本筋は“全体最適”を実現すること。事業者は自社の製品やサービスに固執することなく、顧客の希望を考慮しつつ、目的実現に最もふさわしい製品やサービスを、それが他社のものでも躊躇(ちゅうちょ)なく導入していく姿勢が望まれます。弊社では当然、それを行っていますが、そうした企業は必ずしも多くはないようです。
それどころか、建物や施設に関するビジネスということで、ゼネコンやサブコン、不動産会社、リース会社などからも参入が進んでいて、結果としてESCO事業としてのサービスは分化する傾向にあり、高品質を求めての企業間競争ではなく、品質に関しては玉石混交の低価格競争が生じています。はっきり言ってこれは日本特有の現象です」
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