15%節電で首都圏企業は“我慢の節電”に――省電舎・川上光一社長嶋田淑之の「リーダーは眠らない」(3/5 ページ)

» 2011年06月24日 08時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

デメリットの多い“我慢の節電”をどうとらえるか?

 しかし、“我慢の節電”を強行すれば、従業員の作業効率は低下し、企業業績を悪化させることにつながり、結果的に東北地方はもとより日本全体の経済復興に悪影響を及ぼすとも思われるが……。

 「その通りです。オフィスの温度設定を28度や30度にすれば、当然、作業効率は低下します。28度といっても、実際の体感温度はもっと高いでしょう。

 また、すでにオフィスや店舗の照明をある程度、切ってしまっている企業も多いですが、エントランスや階段、廊下などが真っ暗だと、安全面からも問題があります」

 実際、私自身も先日初めて訪れた飲食店の階段を下りようとした時、真っ暗だったために階段を踏み外してしまったことがある。そう考えると、“我慢の節電”とは従業員の作業効率を低下させるばかりか、顧客や取引先、従業員の安全まで犠牲にしかねない節電ということになるだろう。

 省電舎が1986年以来推進してきた日本での省エネルギー事業では、その大前提として顧客企業の周辺環境を変えないで省エネルギーを実現するという考え方があったというが、その観点から見て、昨今のそうした状況に関してはどう感じているのだろうか?

 「オフィスなどで、例えば人感センサーを導入して、人が来ると照明がつき、いなくなると照明が落ちるようにしている企業も増えていますが、隣席の従業員が席を立ったり戻ったりするたびに、ついたり消えたりするのでは気が散るし、作業効率に影響を及ぼしてしまいます。

 こうした場合、弊社の製品やサービスであれば、席を立っても一気に100%照明を落とすようなことはせず、半分程度の明度を維持しつつ、照明を切ったのと同レベルの節電効果を実現できるようにしています。廊下や階段など、施設内の照明全般に関しても、それと同様の考え方で各種の製品やサービスを用意しています。

 また、照明に限らず、例えばトイレの男性用小便器でも、省エネルギーになるだけでなく無臭で使い心地の良い無水トイレをご提案するなど、周辺環境を維持した上での省エネルギーを1つ1つ小さく積み上げていく手法を基本に考えています。

 どの程度までの省エネルギーが可能かは建物の状況によるので、当然ケース・バイ・ケースではあるのですが、たとえそうであっても、建物全体でこうした小さな省エネ努力を積み重ねていくことで、ピーク時の15%節電も可能になると考えています。

 ただ、そうした弊社のビジネスをご理解いただきつつも、今回に関する限りは時間的な制約もきついためにやむを得ず、“我慢の節電”へと向かう企業が圧倒的に多いのだろうと理解しています」

省電舎の無水トイレ

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