なぜ会社員は“クビ宣告”を跳ね返せないのか吉田典史の時事日想(2/5 ページ)

» 2011年06月24日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 (1)〜(3)について説明する前に、基礎的なことを述べたい。結論から言えば、会社が正社員を解雇にすることは法的には難しい。これは時事日想で何度も書いてきたが、理解している社員は少ない(関連記事)。上司や役員が「辞めろ」と言ったら、それを真に受けて辞表を書く人がいる。

 上司が「辞めろ」と1〜2回、言うことは法的に即、問題になることではない。部下が会社に残るかどうかを決めればいいのだ。上司が決めることではない。これは労働法や民法で認められている。部下を辞めさせたいならば、上司は役員らを説得し、解雇の手続きを取らせるようにするべきなのだ。

 多くの会社は、それをしない。上司が何をいおうと、常識をわきまえた人事部や役員らは解雇通知を出さない。そんなものを出して裁判や労働組合ユニオンの団体交渉などに引きずり出されたら、会社が法的に負ける可能性がある。それくらいに正社員は法的に保護されている。

 会社として解雇にできないからこそ、上司は「辞めろ」と迫り、辞表を書かせようとする。その手段としてイジメをしたり、能力以上の仕事や不得意な仕事をあてがったり、閑職に異動させたりするのだ。辞めさせる権限がないから、このレベルのことを繰り返すしか方法がないとも言える。

 ここまでのことを踏まえたうえで、前述の(1)〜(3)までの対応を考えたい。(1)のリストラの対象になったとき、上司や人事部から「辞める」ように言われたら、それをICレコーダーに録音しておくこと。テープレコーダーよりも薄いだけに、見つかりにくい。音をきれいに録ることができる。このやりとりが、その後、話し合ううえで証拠となる。

 会社に残る意思があるならば「私は辞めません」と繰り返し言うこと。それ以上の会話をする必要はない。相手は話し合うことで情に訴えたりして、辞表を書くように仕向けてくる。

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