「東電とケンカをしても無駄。なぜなら……」――新潟県三条市の市長に聞く相場英雄の時事日想(3/4 ページ)

» 2011年06月23日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

東電とケンカをしても無駄

――そもそもの原因を作った東京電力のケアは? 三条市に来ているのか?

 東電の人は来なかった。避難者のための仮払い保証金の支払いに関しても、極論すれば「勝手に申請してこい」というのが東電のスタンスだ。三条市長として、東電に説明会に来てほしいとは言わなかった。実際に避難者と東電関係者が会うと、トラブルになる可能性もあった。

 保証金申請に関し、避難者が用紙の記入の仕方が分からないと言った場合、どうするのか東電に尋ねたら「問い合わせてください」という対応だった。正直なところ「それはないだろう」と思った。ただ、東電もいっぱいいっぱいで余裕がないのだろうと判断した結果、仮払い保証金とは関係のない立場ではあるが、三条市として避難者のお手伝いをすることにした。

 我々が申請書を配り、書き方も教え、皆さんから回収して、三条市が代表して東電に申請している。三条市では、保証金支払いに関する不満は避難者からあがっていない。全身全霊で支えるという誓いは、こういうことにも生かされたと思う。避難者の皆さんから下駄を預けていただいた以上、1人をお手伝いするのも100人助けるのもあまり変わりはない。

 東電の立場からみれば、三条市は与し易い相手だったかもしかもしれない。ただし、三条市が避難者を代表して東電とケンカしても誰の利益にもつながらない。仮に我々がケンカをしたとしても、東電は絶対に後世にこういったノウハウを伝えない体質だから、ケンカするだけ無駄だと考えた。

 それよりも、避難者が1日も早く保証金をもらえるほうが良い。避難された方々にとっては、申請書を出したという行為自体で心が落ち着く。その環境を作ることが、優先順位としては高いと判断しただけだ。ただし、市長が作った方針のために、市の職員は余計な仕事が増えて相当泣いているのは事実だ。

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