ニュース
» 2011年06月22日 12時30分 UPDATE

何が改革を妨げるのか?――現役官僚が語る、官僚や東京電力の問題 (1/5)

改革派官僚として知られ、国家公務員制度改革推進本部事務局で関連法改正などを進めてきた経済産業省の古賀茂明氏。1か月で16万部が売れた『日本中枢の崩壊』の刊行記念会見では、改革を妨げている公務員制度の問題点や、電力会社が各業界を支配する構造について語った。

[堀内彰宏,Business Media 誠]

 改革派官僚として知られ、2008〜2009年に国家公務員制度改革推進本部事務局で関連法改正などを進めてきた経済産業省の古賀茂明氏(@kogashigeaki)。その姿勢が評価され、鳩山由紀夫内閣発足当初、仙谷由人行政刷新担当大臣(当時)の補佐官起用が内定したものの、各省から強い反発があったため仙谷氏は断念したとされる。

 2009年末に国家公務員制度改革推進本部事務局を退任後、経済産業省で大臣官房付という閑職に置かれる中、『週刊エコノミスト』に実名で論文を寄稿、民主党政権の公務員制度改革を批判した。そうして、公務員制度改革の必要性を訴え続けたためか、2010年10月、参議院予算委員会で仙谷由人官房長官(当時)から恫喝を受けたと報じられた。

 古賀氏は公務員改革の流れや東京電力の処理策などについて記した『日本中枢の崩壊』を5月20日に刊行、発売1カ月で16万部を超えるベストセラーとなっている。刊行を記念して6月21日に東京・有楽町の日本外国特派員協会で行った会見では、改革を妨げている公務員制度の問題点や、電力会社が各業界を支配する構造について語った。その内容を詳しくお伝えする。

ah_keisan1.jpg 経済産業省の古賀茂明氏

民主党の政治主導が失敗した4つの理由

古賀 今日お話したいことはたくさんあるのですが、3つに絞ってお話ししたいと思っています。1つ目は民主党が実現したいと言っていた「政治主導」の問題。2つ目は、政治主導と密接にリンクしていますが、私が最近まで取り組んでいた「公務員制度改革」の問題。そして3つ目が「東京電力」の問題、これは日本が抱えている構造問題のすべてが凝縮している問題だと思っています。

 最初に1つ目のテーマの政治主導についてお話しします。みなさんに同意していただけると思うのですが、民主党は政治主導を目指しましたが結局はできませんでした、これまでのところは。「なぜ失敗したのか」を私なりに考えてみました。

 第一に「民主党は政治主導の意味を間違えたんじゃないか」ということです。当たり前のことですが、政治主導というのは「政治家が官僚を使って政策を実現する」ということですね、自民党時代はそれが逆になっていて、官僚が政治家を使って自分たちの利益を守る政策を実現していました。

 それを批判して、民主党は「政治主導を実現する」と言ったのですが、民主党は官僚を使って自分たちの政策を実現しようとするのではなくて、官僚を「自分たちの競争相手だ」ととらえてしまったようです。つまり、官僚と民主党の閣僚が横に並んで競争する、そして「自分たちの方が有能なんだから、官僚を排除して行政を実行しよう」と試みたということだと思います。

 2つ目の問題点は「閣僚に政治主導を実行する能力がなかった」ということだと思います。政治主導をやろうとしたら、閣僚にその能力がなくて、従って閣僚が自分で何かをやろうとしたら大きな混乱が起きたということです。これを自覚した人は結局、官僚に頼る道を選びました。気付かなかったところでは混乱が続きました。

 仙谷由人さんが官房長官になった時、この問題によく気付いていたと私は思っています。そこで彼は大臣たちに対して、「もうちょっと官僚と仲良くしろ」という指示を出しました。そして、政治主導の大事なところは全部自分で仕切ろうと考えたんだと思います。ただ、1人でそんなことをやるのは不可能なので、実際には財務省を中心とした官僚に頼らざるを得ない状況に追い込まれたと思います。

 失敗した理由の3つ目は「有能で信頼できるサポートスタッフがいなかった」ということです。政治家の能力は当然限られますし、1人でできることはそんなに多くないので、いかに自分が信頼できる優秀なスタッフを抱えられるかが重要なポイントになります。しかし、民主党の首相を含めた閣僚は、ほとんどそういうスタッフを持っていませんでした。

 そして4つ目、これを言うと望みがなくなるのですが、「首相や大臣がそもそも何をやりたいのかという目的を持っていなかったのではないか」ということです。

次のリーダーに求められる条件

 今、菅直人首相の進退が話題になっていますが、次に新しいリーダーが選ばれるとすれば、そのリーダーや内閣に求められる政治主導を実現するための条件は、こうした失敗した理由から自ずと分かってきます

 第1に「リーダーはビジョンを持っている」ということです。これは最小不幸社会とか平成の維新とか第三の開国とか、そういう抽象的なレベルだけではダメです。例えば、小泉純一郎首相の時には彼のスローガンの中に「民間でできることは民間で」というスローガンがありましたが、それは抽象的なレベルだけではなくて、それを象徴する具体的施策として郵政民営化というものがありました。こういうものがセットになっていないといけないと思います。

 第2に「リーダーの資質が高い」ということです。これをわざわざ言わないといけないところが問題なのですが。最近、1年ごとに首相が代わっていることもあって、首相になる人が十分な時間をかけて選ばれるという過程がなくなっています。特に民主党の場合は自民党と違って、派閥の中でもまれたり、長い時間政権にいる中でいろんな仕事を経験するということがなかったので、次に選ばれる首相を考えた時、「何によってリーダーの資質がテストされたのか」が非常に不安なところがあります。不安だと言っているだけではしょうがないのですが、いずれにしても、「そのリーダーの資質が本当に高いということを示してもらわないといけない」と思います。

 第3に「ビジョンを実現していく具体的で明確な戦略を持っている」ということです。その戦略に基づいて、内閣の閣僚に「実現する方策を考えろ」と指示するので、この戦略がないまま政権について政策を実行しようとすると、今までのような混乱に陥るのではないかと思います。

 第4は「非常に優秀な自分のスタッフを持っている」ということです。信じられないことなのですが、首相になってから「誰を集めようか」と考える人が結構いるんですね。そうではなくて、首相になる人はやりたいことがあるわけですから、それを誰を使ってやるのかという考えを事前に持っていないといけません。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

ITmedia 総力特集