任天堂の「Wii U」は血みどろの戦いを覚悟したのか?それゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)

» 2011年06月22日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]
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3つ巴のレッドオーシャンとなった市場で勝ち抜くためには……

 気になるのは、Wii Uには、ターゲットやポジショニングのぶれが垣間見えることだ。

 6月9日付日本経済新聞に「戦略分析」という記事で、任天堂・岩田聡社長のインタビューが掲載されている。サブタイトルに「高性能で巻き返し」とある。記事中ではYOMIURI ON-LINE同様に、「幅広い顧客層の獲得を目指す」とある一方、「『Wii』は家族が主な顧客層だったが、新型機は高画質な映像などで、熱心なゲームファンを引きつけたい考えだ」ともある。

 実際、「MS(マイクロソフト)やSCE(ソニー・コンピュータエンターテインメント)のゲーム機に比べ見劣りしていた画像の表示性能も高める」とある。WiiのポジショニングかつUSP(Unique Selling Proposition=自社独自の提供価値)は、映像の美しさではなく、「体感」できること、それを用いて「家族や仲間とワイワイ楽しめる」ということだ。

 恐らく開発陣も頭を悩ませたのが、その「体感」がもはやUSPとはなり得ていない現状だろう。2010年11月に発売されたマイクロソフトの「Kinect」。Wiiがリモコンを通じて身体の動きをゲーム機本体に伝えるのに対し、ゲーム機Xboxにプレイヤーの身振り手振りや音声を検知して操作を可能にする入力端末だ。「発売してから販売台数1000万台を超えた」(6月9日付日本経済新聞)という。任天堂はWiiの性能を高め、Wii Uに進化させることで、競合とのガチンコ勝負に戻ってしまった。

 任天堂「Wii U」がレッドオーシャンを戦い抜く、もしくはそこから抜けてブルーオーシャンを見つけるためには、高性能なゲーム機のプラットフォームの上で動く良質なソフトで、「誰に」「どのような体験」を提供すればいいのかを、今一度立ち止まって考えてみることが求められる。

 まだ未発売なので、そこにどれだけの未知の可能性がつまっているハードウエアなのか、まだ判断がつかない部分もある。任天堂VS.マイクロソフトVS.ソニー・コンピュータエンターテインメントの3つ巴の戦いの行方を追うだけでも、頭の体操になる。

 あなたが、任天堂の指揮官だったら、誰にどんな価値を提供するだろうか。

金森努(かなもり・つとむ)

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。


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