オヤジの理屈による「AKB48」VS.「少女時代」比較論(1/2 ページ)

» 2011年06月21日 08時00分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:中村修治(なかむら・しゅうじ)

有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役社長。昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。


 「第3回AKB48選抜総選挙」の過熱する報道を冷静に横目で見ていた私(48歳)の最近の“ヘビーローテーション”は、少女時代の『MR.TAXI』である。私の周りのオヤジに少女時代の隠れファンは多い。我々オヤジは、AKB48より、断然、少女時代の方が好きなのである。それは、なぜか?

AKB48はコンテクスト型のアイドル

AKB48『Everyday、カチューシャ』

 アイドルグループAKB48の22枚目のニューシングルを歌う選抜メンバーを決める開票イベント「第3回AKB48選抜総選挙」が6月9日、東京・千代田区の日本武道館で行われ、前田敦子が13万9892票を獲得し、1位に返り咲いた。その結果に対して前田敦子は、「私のことは嫌いでもAKBのことは嫌いにならないでください!」と深々とお辞儀したらしい。これをアイドルに言わせてしまうって、すごいことではないだろうか?

 AKB48は、単なるアイドルではなく、これはもう組織である。働いている少女たちの忠誠心とAKB愛、そして、それを温かく見守り、喝采を送るファンたち。そのどちらもがコンテクスト(文脈・物語)を共有し、それを楽しんでいる。AKB48はコンテクスト型のアイドルで、そのコンテクストに共感できない限り、その人気のホントの意味はよく分からない。

  • ハイコンテクストを楽しむAKB48
  • ハイコンテンツとしての少女時代

 ……という観点において、我々オヤジたちには、このコンテクストに入り込むだけの時間と余裕がない。それなら、手っ取り早く完成したコンテンツとしての少女時代を選択してしまうのである。深い背景も何もないままに、エンターテイメントとして目を楽しませてくれる少女時代に、オヤジたちは、まず1票を入れてしまう。

  • 格差の下位の者のためのAKB48。
  • 格差の上位にしがみつきたい者のための少女時代

 「第3回AKB48選抜総選挙」で動いた総票数は116万6145票。これは2011年の名古屋市長選挙の総得票数94万8605票を上回る数字であり、1位に輝いた前田敦子の得票数13万9892票は、政令指定都市の市長選挙の当選者の得票数並みである。

 AKB48の中で切磋琢磨する少女たちは、ものごころついたころから、ずっと不景気の中を生きている。そして、その世代と同じ若者たちが、総選挙に1票を投じる。これって、高度成長の中でつかみ取った利権を手放したくないじいさんたちが「我こそは」と叫び、「高度経済成長を再び」と願う高齢者の方々が選挙に行く国政選挙とは、まったく逆の構図である。

 AKB48総選挙の総得票数は、一昨年が5万4026票。昨年は35万4074票。今年はその3倍以上となっている。政治不信が大きくなるほどに、AKB48の総選挙は盛り上がり、注目される。この現象は、日本の若者たちの今の政治への反旗であると受け止めた方が良い。

 景気が低迷する中で生まれた「格差という物語」は、自らのその位置を格差の下位に定める者の方が推進力を持つ。AKB48を支えるファンたちは、その格差の物語の推進者であり、AKB48自体が総選挙という活動を行うことによって組織内格差という物語を紡ぎ出し、拡大している。「格差という物語」が、AKB48のコンテクストには脈々と流れている。

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