コラム
» 2011年06月22日 08時00分 UPDATE

「騙し絵」と「企業ビジョン」の不思議な関係 (1/2)

戦略策定に際して、外部環境を客観的に分析することは非常に重要。しかし、客観なんて本当にあるのだろうか? 筆者は外部環境分析の話をする時には、必ず騙し絵とビジョンの不思議な関係について説明するという。

[伊藤達夫,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:伊藤達夫(いとう・たつお)

THOUGHT&INSIGHT株式会社代表取締役、東京大学文学部卒、認定エグゼクティブ・コーチ(JIPCC)。コンサルティング会社にて食品、飲料、化学品メーカーなどのマーケティング寄りのプロジェクト、官公庁などのプロジェクトに携わる。その後、JASDAQ上場の事業会社に移り、グループ戦略、事業戦略、業務改革などに携わる。結果的に最年少でのマーケティング部門、部門長となる。ブログ「ゆるーいコンサルタントな日々


 「老婆と貴婦人」と言われる騙し絵をご存知ですか? ↓のような絵ですね。

ah_nau.jpg

 小学校や中学校の教科書によく出てくるので、見たことがある人は非常に多いのではないかと思います。この絵は、老婆だと思って見ると、老婆に見えます。そして、貴婦人だと思って見ると、貴婦人に見えます。

 でも、同時には見えないですね。

 老婆に見える時の目の部分は、貴婦人に見える時は耳に見えます。老婆の口に見える部分は、貴婦人の首に見えるんですね。「どんな全体か?」によって、各部分の意味合いは変わってくるのです。

 こういう部分と全体の関係性のことを「ゲシュタルト」と言います。初耳でしょうか? セラピーや心理学、科学哲学の世界では有名な言葉です。そして、経営学の世界でも、必須の概念だと私は思っています。

 全体は、要素と、ある意味で恣意的な要素間の関係性によって、成り立っている。そして、その関係性は、恣意的に変わる。昔の言葉で言うと「あばたもエクボ」でしょうか? その相手を好きだと思って見れば、「あばた」という吹き出物もエクボに見えたりする。すべては全体観と、関係性の中で成立するものなんですね。

 「そんなの当たり前だ」と思いますか?

 でも、意外とビジネスでこのことを理解するのは、難しいのです。

 例えば、コンサルティングサイドの人間が、シンクタンクを揶揄して言うのが、「シンクタンクの報告書には主語がない」という言葉です。

 「今期の売り上げは10%増、営業利益は5%増である」という風に書いてあったとして、「その事象の意味合いは?」という問いに答えていないというものです。まあ、ファクトを集めることは集めることで、価値はあるんですけどね。ただ、コンサルティングバリューとは違うものですね。

 それで、この「意味合い」というのが、「関係性の中で物事を見る」ということです。「全体として、老婆を見ようとしているのか、貴婦人を見ようとしているのか?」によって、変わってくるということです。

 その意味合いによって、企業がすべきこと、アクションは変わってきますよね。

 あまりいい例ではないですが、今期の売り上げが10%増だったとしても、5年後に目指している数値などによって、その意味合いは違ってきますよね。今時はあまりありませんが、5年後は売り上げが倍増する、という目標の中では、この10%は少ないという評価になりそうですし、もし、5年後に20%増の計画を立てているとすれば、10%は多いという評価になります。

 そして、今期のリソースの投入と、活動はどうだったのかを考え、来期の計画、つまりアクションを考えます。

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