買うべきか、待つべきか――増税で変わる住宅購入事情あなたはどうする? 住まいの選び方(1/3 ページ)

» 2011年06月17日 08時00分 公開
[権田和士(日本エル・シー・エー),Business Media 誠]

権田和士(ごんだ・かずひと)のプロフィール

早稲田大学卒業後、日本エル・シー・エーに入社。現在は同社で執行役員。住宅業界向けコンサルティングで、日本最大規模の実績を誇る住宅不動産事業部の事業部長を務め、これまで50社以上の支援を行う。1年間のうち、300日以上講演や研修を行い、その研修生は年間でのべ4000人以上に及ぶ。住宅・不動産業界の未来を見据えた業界動向のほか、全国各地の工務店やデベロッパー、ハウスメーカーの個別事情に精通している。

また住宅業界の専門誌などで、数多くのコラム連載を行っている。経営コラム「住宅業界を斬る!」を連載中。


 消費税が増税されるかどうか――注目している人も多いだろう。「税率(現行5%)を2015年度までに段階的に10%へ引き上げる」ことを前提に政府内で議論が交わされ、20日には最終案が決定される見通しだ。

 将来的に住宅購入を検討している読者であれば、この6月は増税論議から目が離せない月となるだろう。増税の時期、上げ幅によって、住宅の駆け込み需要がどのように発生するかが変わってくる。また増税の議論が中途半端になされ、最終案が世間の納得できないものであれば、日本の財政健全化の取り組みに不信感が強まり、長期金利上昇につながるリスクもある。

 今回は、消費税の増税が住宅購入に与える影響について海外の消費税事情や、阪神大震災時の駆け込み需要を取り上げながら皆様にお伝えしていきたい。

住宅取得に消費税をかけている国は少ない?

 増税の議論でまず考えるべきは、住宅取得に対する消費税も同時に引き上げられるか、それとも据え置きになるかである。世界各国と比較すると、住宅取得に対して消費税(付加価値税)をかけている国は少なく、課税していても2〜4%程度と低い税率である。

 住宅取得の消費税に関して欧米各国では住宅政策上その扱いに配慮がみられるが配慮されていないのは日本だけである。そのため、住宅取得にかかる消費税は現行の5%で据え置くべきであるという議論も実際に起きている。しかしながら、現実的には「住宅取得にかかる増税の据え置き」という可能性は低いだろう。日本の財政健全化のために税収を上げるならば、住宅取得の増税は税収アップの大きな要因となる。

 また、1997年の消費税率引き上げ前に住宅の駆け込み需要が起きたように短期的には景気対策につながるという側面もある。そういった意味合いから住宅取得にかかる消費税の増税は避けて通れないだろう。

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