「震災のせい……」と言い訳をする、ダメな経営者吉田典史の時事日想(2/4 ページ)

» 2011年06月17日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

「震災で……」を繰り返す

 震災の影響を直接的に受けている企業ももちろんあるだろう。しかし居酒屋のこの主人は、自らの非を震災のせいにしているように見えた。居酒屋をはじめ外食産業は、震災以前から不況だ。信用調査機関・帝国データバンクによると、2010年1〜12月の外食産業の倒産(負債1000万円以上、法的整理のみ)は623件(関連リンク)。2008年以降、3年連続して600件を超えている。そのうちで居酒屋の倒産は201件。これは前年比4.1%増で、過去最多。売上不振などを主な原因とする「不況型」が全体の84%を占めている。

(出典:帝国データバンク)

 中小企業診断士の中川貴智氏は、今後、個人商店の経営は一層苦しくなる可能性があると分析する。

 「もともとこの業界は新規参入がしやすい。だから、生存競争は激しい。廃業していく個人店は多い。資本力が弱い個人商店は何か工夫をしないと、生き残れない。最近は価格破壊が進み、安い値段で飲むことができる店もたくさんある。例えば、焼酎だけに特化するなどして差別化を図り、固定客をつかんでいかないと、最後はこういう安売りのグループに入らざるを得なくなる。ここでは資本力があるチェーン店が有利。個人商店はかなり苦しい」

 この店については、こうとらえる。

 「居酒屋の経営は、お客が店に来てからのサービスはもちろん大切であるが、それ以前に『あの店に行きたい』と思わせるものがないと、成功しない。あまりにも汚い店は、サービスをする以前に負けている可能性がある。

 しかし、それでも本気で経営を変えようとしない店もある。個人で営む店は毎日、多少は客が入り、日銭が手元に残る。店主はこれに満足し、経営のスタイルを抜本的に改めようとしなくなる傾向がある。その結果、固定客も逃がし、次第に売り上げを減らしていき、廃業になっていくことがある」

 この店の業績が伸び悩むのは震災の影響ばかりではなさそうだ。ところが、相変わらず「震災で……」を繰り返している。

外食産業の倒産件数(業態別、出典:帝国データバンク)

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