ビジネスパーソンに有益なコンテンツを無料で提供――bizocean×Business Media 誠ネットメディア編集長対談(4/5 ページ)

» 2011年06月16日 09時55分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

bizoceanとBusiness Media 誠、協業のメリットとは?

吉岡 Business Media 誠を立ち上げた当初は、IT系WebサイトであるITmediaとは違い『専門誌ではない』という理由でバナー広告がなかなか取れず苦労しました。当時に比べればずいぶん状況は良くなりましたが、それでも雑誌に比べると、コンテンツ制作にかけられるコストはとっても少ないんです。紙媒体との比較で言えば、ゼロが1つ少ないと言っていいと思います。でも、コンテンツのクオリティは保ちつつ、赤字にならないよう運用しなくてはいけない。

 そういう意味で最近特に強く感じるのが、『Webの世界で生き残るには、大きいプレーヤーじゃないとダメだ』ということです。雑誌の場合、競合との比較で3〜4位に入っていれば大丈夫でしたけど、Web媒体ではナンバー1じゃないとダメだと思います。特にビジネス媒体の場合、古くから雑誌を出している会社の知名度は圧倒的。それもあって、誠が成長するためには、協業してくださるパートナーを増やし、みんなで大きくなっていくことが大切だと考えています。

 今回、bizoceanと誠が協業することには大きな意義があります。まず、読者の皆さんから見て、得られる情報の幅は格段に広がります。誠とbizoceanの読者層は異なっていますが、異なることで、逆に双方にメリットが生じます。お互いに読者を食い合うのではなくて、それぞれが読者層を拡大し厚くすることができる。

 一人の読者のどれだけの時間をもらえるかが大事だ、と最近よく思います。例えば、昼休みに会社で誠の記事を読んでいた人が、ビジネステンプレートをダウンロードするために仕事中もアクセスしてくれるようになれば、一人の読者さんがサイトに接する時間と頻度が上がる。どうやってファンを作るか、一見(いちげん)さんではなくて、熱心な読者をどう増やしていくか。そういう意味で、今回のコンテンツ相互提供は、非常に有意義な協業だと思います。

 まさにその通りです。今後はコンテンツ以外でも協業していきたいですね。

ビジネステンプレートに続くヒットのネタはどこに?

 bizoceanを6年間やってきてつくづく思うのですが、Webにおけるビジネス媒体は、一体どうすれば盛り上がるんでしょうね?

吉岡 コンテンツはそれなりに作れるけど、一過性のものになりがち。継続して盛りあげていくのは、確かに簡単ではないですよね。ひとつの方向性として、bizoceanには『みんなのビジネスQ&A』というコーナーがありますが、あの可能性はどうなのでしょうか?

 いやー、実はあれは難しいんですよ。と言うのも、寄せられる質問自体が、非常に専門性の高い、難しいものが多いんです。例えば、『競合会社に従業員を大量引き抜きされてしまったけれども、どうやって法的手段に訴えればよいか?』などといった質問が来るんです。そういうレベルの話は、状況をもっと詳しく聞かないと答えられないし、弁護士の先生など専門家じゃないと到底対応できませんよね。ユーザー同士で質問したり答えたり、という形を考えていたのですが、どんな分野の質問でも、こういうレベルの質問が非常に多いのです。でもやり方を変えれば、有意義なものになると考えています。

吉岡 なるほど、そうなんですね。では、今後の可能性という意味では何に期待していらっしゃるのでしょうか? 今後もテンプレートが中心になりますか?

 現在、会員数は60万人ですが、それ以上に大きくしようとすると、テンプレートだけでは限界が出てくると思います。継続的に使ってくれる人も、それほどの頻度でサイトを訪れるわけではありません。ダウンロード回数は、一人当たり平均月1回くらいです。それは無料ダウンロードサービスの特性なのかもしれませんが、でも、結局、それくらいの頻度なわけです。

 ですので、サイトの事業戦略をもう一度考え直してみたのです。このサイトの特性、訪問者の分析、現在人気のあるほかのサイトの研究、そして最も大事なユーザーの皆さん方が「何を望んでいるのか」をスタッフ全員と何度も議論しました。結果、単純ですが、"無料"というキーワードが、このサイトの最大の特長だったことに気がついたんです。

 早速、次は何を無料にすると意味があるのか、ユーザーであるビジネスパーソンにヒアリングしました。本当に、仕事上ではさまざまな悩みがあるのですが、一番困っているのは、どうやって新しい取引先を見つけるのかということでした。営業先も注文先もどちらもです。

 そこで、昨年(2010年)12月20日のリニューアルのタイミングで、「ソーシャル企業情報」(参照リンク)という約50万件の企業情報が閲覧できるデータベースサービスコーナーを始めました。このサービスは、基本的にインターネットで公開されている会社の情報をベースに、みんなの力でその会社データの精度を向上させていこうというものです。みんなで作るから、もちろん無料です。

吉岡 クリス・アンダーソンの『FREE』みたいですね。Webらしい話だと思います。

 ええ、コンテンツを無料にすることで人が集まる。逆に言えば、無料にすることで、それを活用する人たちのビジネスがスムーズになる――これは有意義なことだと悟りました。だから、サイトのコンセプトが「すべてのビジネスコンテンツを無料に!」なんです。また、さらなるアクセスを集め、増やすには、“ソーシャル”の力、ある意味みんなの力でよりよいサービスを形成していく“編集力”といってもよい力が大事なのではないかと考えています。私がテンプレートに続くコンテンツだと考える企業情報も、まさにそうしたソーシャルの力で精度を上げてゆくことで、皆で共有して使えるようになるのではないかと思います。

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