コラム
» 2011年06月09日 08時00分 UPDATE

相場英雄の時事日想:言ってはいけない。被災した子どもに「がんばれ」と (1/2)

東日本大震災が発生してから、まもなく3カ月が経とうとしている。被災者は徐々に普段の生活を取り戻しつつあるが、被災地以外の人が「がんばろう」「がんばれ」と気軽に口にしてもいいのだろうか。今回の時事日想は、激励の言葉が持つ意味合いに触れた。

[相場英雄,Business Media 誠]

 東日本大震災の発生からまもなく3カ月。被災地では仮設住宅への入居が始まり、工場が操業を再開したりと、徐々に被災者が普段の生活を取り戻しつつある。日常を取り戻しつつあるのは、子供たちも同様だ。ただ被災地の一部では、教育現場で教職員と上層部の間で意見の乖離(かいり)が生じ、この溝が深くなりつつある。「がんばろう」という言葉が、溝の正体だ。被災地以外の人が励ましで気軽に使う「がんばろう」「がんばれ」という言葉には二面性がある。今回は激励の言葉が持つ意味合いに触れる。 

がんばれとは言わないで

 3月17日、筆者は漫画担当の編集者とともに仙台市出身の友人と会った。友人は同市若林区荒浜の出身だ。大都市・仙台でも、甚大な津波被害にあった場所としてご存じの読者も多いはず。

 3人で話をするうち、友人が津波被害にあった実家の写真を見せてくれた。故郷に住む姉が送ってくれたという携帯メール写真に、筆者と担当編集氏は絶句した。

 友人の実家は荒浜地区の中でも比較的土地の高い場所にあったことが幸いし、一階部分が浸水したのみで、家が丸ごと流されるようなことはなかった。同時に、ご家族や親族も奇跡的に全員無事だった。ただ、真っ黒な水が押し寄せ、敷地内の自家用車3台は完全に水没。周辺の庭にはプロパンガスのボンベが多数漂着するなど、津波のすさまじい威力に驚かされた。

 新聞やテレビで津波被害の甚大さを見聞きしていたものの、実際に友人の家が被災したことを知った初めての機会だった。それだけに、同日に受けたショックはいまだに鮮明に記憶している。

 友人との別れ際、筆者はご家族のために「がんばってと伝えてほしい」旨を口にした。直後、友人の顔は強張り、こう言った。「こんな大津波を生き抜いた家族に、がんばれなんて絶対に言えない。これ以上がんばったら、ウチの家族は死んでしまう」――。

 友人が発した言葉に触れ、筆者と担当編集者はもう一度絶句した。これ以降、筆者は被災地の友人やお世話になった方々に対して「がんばれ」という言葉を口にしないよう心がけてきた。

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