「原発に未来? ない」――蓮池透が語る、原発労働の実態(後編)(1/3 ページ)

» 2011年06月08日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 東京電力の福島第1原発はいまだ危険な状況が続いている。北朝鮮による拉致問題で被害者家族として活動した蓮池透さんは、かつて東京電力、しかも福島第1原発で働いた経験を持つ。発電所全体の安全統括などを担当していた彼は、今回の大惨事をどのように見ているのだろうか。前編に続いて、お送りする。

 →「私も、被ばくした」――蓮池透が語る、原発労働の実態(前編)

※本記事は6月4日に開かれたシンポジウム「そこで働いているのは誰か――原発における被曝労働の実態」(主催:アジア太平洋資料センター)の講演内容をまとめたものです。

編集部注

  • 記事掲載時(6月8日)、蓮池透さんの写真を掲載していましたが、ご本人の希望により削除しました。

原子力政策は見直すべし

 東京電力福島第1原発で事故が起き、2カ月が経過して、ようやく「メルトダウン」という言葉が出てきた。もし事故が起きた3月11日に「メルトダウンした」と発表していたら、日本は大変なことになっていたはずだ。だから東電は「メルトダウン」という言葉を使わなかったのだろう。

 毎日のように原発事故のニュースを見ていて、「もういいや」「もう飽きた」という人もいるのではないだろうか。多くの人が原発事故のニュースに“鈍感”になってきたタイミングで、東電は「メルトダウンしていた」と説明したのだ。

 工学的にメルトダウンが起きる確率は10のマイナス6〜7乗と言われてきたが、それが1度に3機も起きてしまった。これほど大規模な事故が起きてしまった以上、今後の原子力政策はきちんと見直さなければいけない。

 私が最も心配しているのは、菅首相がいつも思いつきでこの問題を語っているのではないか、ということ。例えば菅首相は浜岡原発の運転停止を命令したわけだが、それを聞いて「なんなんだ!?」と思った。「今後30年以内に巨大地震が発生する確率は87%。だから浜岡原発は危ない」という気持ちは分かるが、なぜ浜岡原発を停めて他の原発は停めないのだろうか。菅首相は「国民が騒いでいるから、浜岡原発を停めておけ」といった思いつきで、語っている気がしてならないのだ。

 今後、原発を増設することは難しいだろう。ただ一度に原発を停止してしまうと、日本のエネルギーの需給関係はめちゃくちゃになってしまう。また日本経済はどうしようもなくなってしまうだろう。ドイツのように、日本の原発もフェイドアウトするしかない。何年後かに原発依存度を低くしていかざるを得ないわけだが、フェイドアウトしていく分を他のエネルギーで賄わなければいけない。代わりのエネルギーは水力なのか、火力なのか。水力は開発しつくしているし、火力はCO2などの問題がある。

 菅首相は「1000万戸の屋根にソーラーパネルを設置する」と、また思いついたことを言っている。原発をフェイドアウトしていくのであれば、新エネルギーに対してもっと予算をつけなければいけない。もっと効率の良い太陽光パネルや風力発電所を作りながら、同時に原発を減らしていかなければいけない。

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