この夏には間に合わないが、日本の建物は断熱に力を入れるべき松田雅央の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年06月07日 07時54分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 日本の住宅は徒然草で「家の作りは夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる」と書かれているように、まず夏の暑さ対策が肝心といわれる。現代人にとっては「暑さも寒さも嫌」となるが、寒冷な土地を除けばやはり住宅の構造も生活様式も暑さと湿気をしのぐ工夫が凝らされる。震災に伴う電力不足から冷房の節制が求められるこの夏は、特に徒然草の言葉が身にしみそうだ。

 一方、ドイツの住宅は冬の寒さ対策を第1に考える。

 ドイツでは温暖とされる筆者の居住地域も、ときにマイナス15度を下回る厳寒に襲われ、年間平均気温は秋田市と同程度だ。暖房は温水を循環させるセントラルヒーティングが主流で、地下室に設置されるボイラーの燃料は灯油か天然ガスが一般的。最近は木質燃料(木質ペレットなど)やバイオディーゼルも増えてきた。ドイツの建物は暖房エネルギー消費量が多いだけに、古い住宅の断熱改修、エネルギー効率の高い暖房システムの導入、省エネに優れた造りにするなど、省エネ暖房は経費節減とCO2排出削減の膨大な可能性を秘めている。

 ドイツの住宅は冬に重きを置いているが、実は断熱性能の考え方は冷房にも大いに生かせるものだ。今回はドイツの建物の省エネルギー基準から、夏も冬も快適に過ごすための断熱について考えてみたい。

ドイツの平均世帯のエネルギー消費内訳(単位:%、出典:カールスルーエ市環境局の資料)

暖房 給湯 その他の器具 冷蔵・冷凍 炊事・洗濯 照明 合計
78.0 11.0 4.5 3.0 2.5 1.0 100
改装中の屋根裏部屋
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