第49鉄 マルーン色の電車旅――阪急電車と能勢電鉄で行く妙見山杉山淳一の+R Style(6/6 ページ)

» 2011年06月07日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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モミジの新緑もまたよし

 妙見山を開いた人は戦国武将の能勢頼次。能勢家は足利将軍家に仕えたため織田信長と対立、本能寺の変では明智側について豊臣秀吉に敗れた。能勢家は逃れ逃れて日蓮宗の寺に身を寄せた。そこで徳川家康に召し抱えられ、関ヶ原の戦いで活躍した。能勢家は徳川によって再興を果たす。能勢頼次はこれを日蓮の教えの賜物と考えて信仰を深め、妙見山と屋敷を身延山の日乾上人に寄進した。日乾上人はその期待に応えて能勢の地で教えを説いたという。

 妙見山眞如寺の本殿は他の名刹に比べれば控えめな佇まい。境内もドラマのセットのようにこぢんまりとしている。能勢頼次は身の丈に合った規模を心得ていたのだろうか。いかにも武士が開いた寺という雰囲気で好ましい。妙見山の経緯を知ると武運のご利益がありそうだ。妙の字が美を表すことから、花柳界や芸能界からの信仰も厚く、江戸本所に妙見大菩薩の御分体を祭って勝海舟の信仰を得たという。

こちらは信徒会館。宇宙人と交信できそう……

 妙見山は長い歴史を繋ぐ一方で、新しい信仰の形も具現化した。1998年に建てられた信徒会館は星をイメージしたガラス張りの礼拝塔。寺院の概念を刷新する姿だ。信徒会館という名前ではあるけれど、信徒でなくても入館できる。内部にはガラスの床のホールがあって、西欧風の衣装をまとったガンダーラ様式の仏像が4つ浮かんでいた。信徒会館の外側が展望台になっていた。晴れて空気が澄んでいれば、関西空港や淡路島も見えるという。残念ながら今日は霞んでいた。

 帰り道、深緑のトンネルでふと見上げれば、黄緑色の若葉はすべてモミジだった。この若葉も美しいけれど、紅葉シーズンはさぞや見事な色になるだろう。シグナス森林鉄道と庭園鉄道も心残りだし、いつか秋の休日に訪れたい。

信徒会館からの眺め。霞んでしまって残念
参道の木々をよくみると、すべてモミジだった
map 今回のルート。ここをクリックすると筆者による各ポイントについての説明が読める

今回の電車賃

阪急電鉄 「能勢妙見・里山ぐるっとパス」 1300円

→阪急電鉄全線、能勢電鉄全線、妙見ケーブル、妙見リフトに乗り放題。


著者プロフィール:杉山淳一

著者近影(2006年5月に閉館した、東京・万世橋の交通博物館にて)

 肉食系鉄道ライター(魚介類が苦手)にして、前世からの鉄道好き。生まれて間もなく、近所を走っていた東急池上線の後をついていったという逸話あり。曰く「いつもそばを走ってたから、あれが親だと思った」

 コンピューター系出版社でゲーム雑誌の広告営業を経験した後、フリーライターとなる。オンライン対戦ゲーム、フリーウェア、PCテクニカルライティングなどデジタル系の記事を専門とし、日本初のEスポーツライターとしてオンライン対戦ゲーム競技を啓蒙する。

 趣味は日本全国の鉄道路線探訪で、現在の路線踏破率は約8割。著書は『もっと知ればさらに面白い鉄道雑学256(リイド社)』『知れば知るほどおもしろい鉄道雑学157(リイド社)』『A列車で行こう8 公式ガイドブック(エンターブレイン)』など。


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